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「まぁ、うちに限ったことではない。隣国も同じようなもんやで。」

「それもそうか。」

政治に詳しいすばるくん。こんな人が国の中心にいてくれたら…

「すばるくんは政治家とか役人にはならんの?」

「性に合わん。その代わり、大学を作って政治に興味のある奴の支援をして育ててはおる。あと数年したら優秀な奴が出てくるわ。」

「お〜!」

「そうなったら、俺らは食いっぱぐれるかもな。」

優しいすばるくんの視線の先にはどんな未来があるんだろう。

「そうなったら理想やな。」

「フ…お前、あんな奴に育てられたとは思われへんええ奴や。」

頭をポンポンと叩かれて、何とも言えない気持ちになる。

「ボス…優しかったんですよ。でもマルは…」

父親の姿の裏で、マルに恐ろしいことをしていたボス。極端な二面性に、ボスという人間が全くわからなくなった。

「ヤバイ奴って何重人格にもなれるんやと思う。」

そういったすばるくんは、何でか申し訳無さそうな顔をしていた。



「大倉…」

「どうした?起きるか?」

「ん…トイレに…」

「間に合うか?」

背中を起こし、その姿勢に慣れるのを待ってベッドに座らせる。全身を俺に預けて、ようやく立ち上がり、俺の支えで動く。

これが何と言うか…何とも言えん!

「よく出来ました。」

「…フ…」

「ん?」

「子どもちゃうし。」

「子どもみたいなもんやん。1人ではまだ何も出来ひんねんから。」

「…」

「どうした?」

「いや。」

ベッドに横になったマルの寂しそうな横顔。触れたくて手を伸ばしそうになるのを、何となく躊躇して思いとどまった。

「マカリオスに…帰りたい。」

「…ほんまに言うてる?」

俺から表情を隠すように反対側に寝返りを打つ。寂しそうな雰囲気が、あの王妃の肖像画と重なった。

「こんな穏やかさには絶えられない。」

「マル…」

今度は考える前に腕が動いていた。そっと肩に触れる。

「到着が遅れてるけど明日には母親にも会える。もう向こうに行く意味がないやんか。」

「ここにいる意味も俺にはない。」

「それは…」

「俺が攫われた理由は?ボスへの挑発?」

今度は俺が黙る番。マルを純粋に救いたかったなんて…そんなん俺の勝手な感情や。

「俺の生きる意味はどこにあるんやろ…」

何も言えずに時間が過ぎる。そのうち眠ってしまったマル。

なんでやろ。儚くて消えてしまいそうなこの人を放っておけない。何とかして救いたい。その思いが俺の中で強くなっていた。

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作者名:orange | 作成日時:2023年12月29日 23時

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