monogram (ページ34)

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橙サイド

「まぁ、そんな心配せんでもすぐに動けるようになるわ。」

「え、大丈夫ですか？」

「食べられるようになったら自然と体も動くやろう。水分は取ってるから、それは世話がいるわ。」

近くの話し声に意識が浮上した。

「ﾝ…」

「あ、マル？どうや？」

敵国のスパイやのに、のぞき込む顔を見て安心する。ボスの部屋じゃない。

「ちょっと体動かすで？」

背中を押してくれて横向きになると、それだけでものすごく快適に感じた。

「話できる？」

気づかう視線に応えようと、とりあえず頷いた。

「そうか。気分は？」

「…お…くら…」

「ん？」

「お前…寝てる？夜…」

「あ〜、ごめん。ちょっと仕事してた。起こしてしまったんやな。」

「ちが…う……すまん。」

「そんなんええよ。ちょっと話せるやん。」

脈を測られ、触診を終えた先生に、「後は食べて運動するだけ」と言われほっとする。

医者が出ていくと、大倉が温かいタオルで顔を拭いてくれた。

「悪い…な…」

「全然。俺が誘拐した主犯ですから、ちゃんと面倒見ないとな。」

「目的…ボスじゃなくて…？」

「それはもうちょい回復してから話そう。気にはなると思うけど。」

気になることも聞きたいことも沢山ある。でもまだ頭が回らず、それを上手く言葉にできなかった。

「あ、横山くん、ありがとう。」

「おう。マル、どうや？ちゃんと食べや。」

横山さんが食事を持ってきてくれた。こんな穏やかな時間を過ごせているなんて…

「マル食べよか。口、開けれる？」

目の前に差し出されるスプーン。そう言われて少し口を開く。

「…ヤバいな。」

そんな呟きの意味はわからないまま、口の中の柔らかい米を味わう。

「旨いか？」

「…ん。」

久しぶりの固形物。いちいち笑顔になる大倉の顔が見たくて、多いと思っていたお粥を全て食べてしまっていた。

◇

緑サイド

「大倉、任務に必要な情報をまとめてくれ。これからお前は司令塔になっていくやろうから、その練習。」

これまではボスに育てられた甘ちゃんくらいしか思われていなかったのが、ここに来て求められることが多くなり、それがやりがいになってきていた。

「こいつら、その日食うもんもないねん。裏でおいしい思いをしてる奴らがおる。」

政治が滞り、地方自治は乱れているところが多い。隣国との戦争ところではない。そんなことされたら、この国は一瞬で滅んでしまう。