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銃声の応酬。俺に弾があたらんのは、このタンカを引きずってる奴が巧みに動いてるからか。
「ほいほい。この被りもん、もう取るで。暑苦しい。姫さん、あとちょっとやでぇ。」
変装か…。ボスを騙せるくらいの変装?
敵にここまでのやり手がいて、よぉ、今までノーマークやったな。横山さんがかなりのやり手やとは思ってたけど、もっとすごい奴が裏におるんか。
そんな事を考えながら、体から力がどんどん抜けていく。
「マル。母親もこっちで確保した。心配いらん。」
大倉の声。何やろ…母親のことよりも、大倉の声に安心する。こいつはボスの…ただの坊っちゃんで…何も知らん…
「眠たかったら寝とき。俺らが守る。」
青二才のくせに…
「ヒナ!」
「あいよ!車に乗り込め!」
バンッと扉の閉まる音。もう体力の限界やった。
◇
緑サイド
「このまま国境を越えるで。追手がすぐにつくやろ。」
「言ってた通り、ボスにマルがさらわれたことが伝わったら秒で動く。そうなったら…」
「松岡さんと長瀬さんか…手強いな。」
「うん。」
そしてすぐにヘリのプロペラがけたたましく音を立てる。
「来た。」
「ヤス、狙えるか?」
「ん、やってみる。」
自分で開発した特殊なライフルを小さな体で支えるヤス。防弾の車にヘリからの無数の弾が跳ね返る。
狙いを定めたヤスが発砲した。車のサイドミラーが吹っ飛んだと思ったら、その直後ヘリが大きく傾いて、急降下する。
「すっげー!ヤスってすげーな。」
嬉しそうにヤスを褒める横山くん。
「ヨコ!手伝え!前や!」
レーサー並の運転を続ける村上くんが、鋭く指示を出す。
「ヒナ!できるだけ伏せろ!」
フロントガラスは防弾とはいえ、何度も撃ち込まれたら終わり。
今度はサイドから身を乗り出した横山さんが狙いを定める。散弾銃の音をもろともせず、正確な一発がタイヤに命中。
「よし、ヒナ、いけるか?」
「たぶん。」
ボスはきっと血相を変えているだろう。屋敷の奴らは大丈夫やろうか…もしかしたら全員…
「大倉、お出ましちゃうか?」
小高い崖の上。わざとらしく姿を見せるのは、それだけで威圧になるから。実際、俺は背筋が強張るのを我慢できなかった。
「同じところに撃ち込まれたら、我慢できて2、3発やと思う。」
おそらく少しの窓の隙間でもあの人たちは狙える。
2人が身構えようとしたその時、またヘリの音が近づいてきた。
「すばるや。援護しろ!」
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作者名:orange | 作成日時:2023年12月29日 23時