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27 橙・緑 ページ27

橙サイド

「苦しい…ハァ…」

何が苦しいのかわからない。焼け付くような体をどうにかしたくて悶えるけど、手も足も縛り付けられて動くことが出来ない。

「マル、ほら、水。」

「ハァ…いらん!!…離せ!これ…グッ…ウッ…離せ!」

「大丈夫や。すぐにおさまる。大丈夫。」

何度も何度も発作のように襲いかかる衝動。しばらくして落ち着くと汗まみれの体をボスが丁寧に拭いていく。

「マル。大丈夫。苦しいな。でも大丈夫や。」

専属の医者によると依存症にはなってないらしい。薬を求める激しい衝動がこれ以上だと考えると恐ろしかった。

「お前に溺れてほしくて、めちゃくちゃしてた。ほんまにすまん。普通の生活ができるまで、もう少し頑張ってくれ。」

ボスの歪んだ愛情。回復した先に何が待っているんやろう…



緑サイド

「館内くまなく写真を撮ってきたで。おそらくバレてない。」

「おそらくでは困る。」

「あ、絶対!」

「これ、館内の構造と美術品。」

ヤスと村上くんが持って帰ってきた資料。美術館の方はあんまり観たことないねんけど…

「あれ…?」

「なんや?」

「いや…」

女性の肖像画。いや、肖像画というのかな、斜め後ろからのアングル。何となく覚えがあるような…

「なかなか立派なもんやったで。学芸員も優秀なんちゃうかな。冷戦中やけど、セレーネのものも飾ってあった。あ、大倉が観てるやつもそう。」

「セレーネの…?」

「うん。」

「…観たことあるわ。」

「え?」

「観たことあんねん、この女の人。」

「どういうこと?」

思い出そうと考えを巡らせる。薄暗い部屋?何か倉庫みたいな…

「ちゃうな…」

廊下や。ボスの屋敷の廊下。この人の絵がたくさん。

「あ!」

「な、なんや!?」

「この人、マルに似てない!?」

「え…?」

「横山くん観て!」

「ん〜?そぉかなぁ…そう言われればそのような…」

「屋敷にあってん。この人の絵。2、3枚どころじゃない。かなりの数やった。」

「誰なん?」

「美術館のやつは題も作者も不詳ってなってるな。作品が素晴らしいから展示されてるみたい。」

「何か繋がりがあるんかな。」

「さあ。今の段階ではわからん。とりあえず俺たちが今すべきは、このお姫さんを奪いに行くことやな。」

厳重な警備。一体どうやって…

「大変やでぇ、忍び込むの。」

「いつものことや。」

「そやけどぉ。」

「あれ苦しいねんなぁ。」

「ごちゃごちゃ言うてんとやるぞ。」

「は〜い。」

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作者名:orange | 作成日時:2023年12月29日 23時

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