27 橙・緑 ページ27
橙サイド
「苦しい…ハァ…」
何が苦しいのかわからない。焼け付くような体をどうにかしたくて悶えるけど、手も足も縛り付けられて動くことが出来ない。
「マル、ほら、水。」
「ハァ…いらん!!…離せ!これ…グッ…ウッ…離せ!」
「大丈夫や。すぐにおさまる。大丈夫。」
何度も何度も発作のように襲いかかる衝動。しばらくして落ち着くと汗まみれの体をボスが丁寧に拭いていく。
「マル。大丈夫。苦しいな。でも大丈夫や。」
専属の医者によると依存症にはなってないらしい。薬を求める激しい衝動がこれ以上だと考えると恐ろしかった。
「お前に溺れてほしくて、めちゃくちゃしてた。ほんまにすまん。普通の生活ができるまで、もう少し頑張ってくれ。」
ボスの歪んだ愛情。回復した先に何が待っているんやろう…
◇
緑サイド
「館内くまなく写真を撮ってきたで。おそらくバレてない。」
「おそらくでは困る。」
「あ、絶対!」
「これ、館内の構造と美術品。」
ヤスと村上くんが持って帰ってきた資料。美術館の方はあんまり観たことないねんけど…
「あれ…?」
「なんや?」
「いや…」
女性の肖像画。いや、肖像画というのかな、斜め後ろからのアングル。何となく覚えがあるような…
「なかなか立派なもんやったで。学芸員も優秀なんちゃうかな。冷戦中やけど、セレーネのものも飾ってあった。あ、大倉が観てるやつもそう。」
「セレーネの…?」
「うん。」
「…観たことあるわ。」
「え?」
「観たことあんねん、この女の人。」
「どういうこと?」
思い出そうと考えを巡らせる。薄暗い部屋?何か倉庫みたいな…
「ちゃうな…」
廊下や。ボスの屋敷の廊下。この人の絵がたくさん。
「あ!」
「な、なんや!?」
「この人、マルに似てない!?」
「え…?」
「横山くん観て!」
「ん〜?そぉかなぁ…そう言われればそのような…」
「屋敷にあってん。この人の絵。2、3枚どころじゃない。かなりの数やった。」
「誰なん?」
「美術館のやつは題も作者も不詳ってなってるな。作品が素晴らしいから展示されてるみたい。」
「何か繋がりがあるんかな。」
「さあ。今の段階ではわからん。とりあえず俺たちが今すべきは、このお姫さんを奪いに行くことやな。」
厳重な警備。一体どうやって…
「大変やでぇ、忍び込むの。」
「いつものことや。」
「そやけどぉ。」
「あれ苦しいねんなぁ。」
「ごちゃごちゃ言うてんとやるぞ。」
「は〜い。」
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作者名:orange | 作成日時:2023年12月29日 23時