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緑サイド
「母親の確保は問題ない。そっちの動きと合わせてタイミングよく連れ出せるようにセッティングしとく。」
マカリオスに戻って新しくアジトを作り、マルの所在を見つけた。
すぐに見つかったのは、倒れて病院に運ばれるという騒動を偶然聞きつけることが出来たから。
公衆の面前で倒れるなんて、スパイとしては恐ろしい失態。そこまで体や精神に異常があるということなんだろう。
早く見つけて助け出してやりたいと気が焦る。
「丸山さんを救出するための理由はどうすんねん?」
「そうや、本人からの依頼でもないし、敵国のスパイとして、こっちのスパイも結構な数やられてるで?」
「大倉をおびき出す挑戦状が送られてきたんやで?向こうは大倉のことを諦めてない。つまり、大倉を救出するという任務が達成出来ていないということや。」
「なるほど。」
「敵の本体を倒すために動く。その途中で、もともとこの国出身で閉じ込められてた丸山さんを救出するというだけ。」
「すばるくん、みんな、ほんまにええの?」
「ええも悪いも、これは任務や。個人的なものと違う。ええか、言うても敵の本陣に入るんや。気合入れて行け。」
マルのいるボスの屋敷。ヤスと村上くんがすぐに調査に向かうことになった。
この国の財を投じて作られた屋敷。美術館も兼ね備え、わざと人の出入りを前面に多くして、その奥の存在感を消している。
「大倉は暮らしてたんやろ?」
「幼い時は。学校に行くようになると寮生活で、屋敷の奥まで入ったことはありません。」
「しかしまぁ…、丸山さんへの執着が恐ろしくないか?」
ボスとマルの関係なんて全く知らなかったけど、相当昔からマルはボスに…
「すばるは何か知ってそうやったけどな。」
「え…?」
「調査中や言うてたわ。帰ってから何かわかるかもしれん。それより、丸山さんは俺らが行ったとしてついてくるやろうか。」
「母親さえ助かればこの国に何の未練もないと思うで。」
「そやけどなぁ…。それこそ、大倉と大恋愛してたら話は早いけどな。」
「…」
視線が俺に集まる。そして始まる茶番。
「片想いらしいで。」
「やることやっといて?」
「最近の子ってホントそういうとこわかんない。」
「ホントよねぇ。体目当てってこと?」
「やだぁ!」
「…」
「はいはい。大倉、落ち込むな。」
「別に。」
「ほらぁ!拗ねたやろ!」
「拗ねてへん。」
「ハハッ!よし、ほんならヤス、行こか。」
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作者名:orange | 作成日時:2023年12月29日 23時