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緑サイド
セレーネへ到着したのは、今から３ヶ月ほど前。
「大倉さん、こちらが俺らのボス。」
「はじめまして。最高責任者の渋谷すばるです。」
「人見知りでかしこまってるけど、ただのおっさんやから。」
「はあ！？」
案内されたアジトは、軍事基地の地下に作られており、最新鋭のシステムで構成されていて、国を裏から支える気概が感じられた。
「しばらくここで匿うから。迷路みたいになってるけど、諜報員が安心して生活できる施設も兼ね備えてんねん。」
広い敷地の一画はマンションのようになっており、案内された部屋は一人暮らしには十分な広さ。
「キッチンもあるし、風呂もトイレも最新やで。」
何でも最近完成したらしく、渋谷さんが様々な手を使って資金を集め、政府が出した金と合わせて国家予算なみの金額をかけて作ったらしい。
「避難所としても使えるし、今後平和になっても活用できるようにしてる。」
満足気に話す渋谷さんは、相当なやり手なんだろう。そんな渋谷さんに最初に聞かれたのは、自分の体のこと。話し合いの席には、村上さんと横山さんも同席してくれた。
「大倉さん、どうする？検査とか受けてみたいか？ヒナから話を聞いて驚いたやろ？」
ヒナというのは村上さんのこと。３人は幼なじみらしい。
「気にはなります。異変があるのかもしれないと思うと怖いですし。」
「そうやろうな。ほんなら検査だけはしてみよう。」
「あの、俺はこっちの政府からの依頼で戻されたんじゃ…？それなら博士が隠した兵器を探すのに利用されるのかと思っていたんですけど。」
「俺らは大倉さんの奪還と保護を任された。別に兵器とかどうでもええ。見つからんねんやったらその方が平和や。」
「そうなんですか…？」
「ん。それよりも、保護と言われたからには、大倉さんが何の心配もせんと暮らせるような環境を作ろうと思ってる。」
「すばるの言う通り。このままではどうしたってまた狙われるやろう？」
村上さんが心配そうな目を向ける。
「大倉さんには自分の生き方を決める権利がある。もし博士の謎に迫りたいなら勿論それでええし、興味がないのなら普通に暮らせる方法を考える。」
渋谷さんの言葉に思わず涙がこぼれそうになって焦る。この人たちは俺のことをちゃんと１人の人間として見てくれてるんや。
「すばるが格好つけるから、大倉さん、引いてるやん。」
「え、ちが…」
「大倉さんは感動してんねん！俺の言葉になっ！」
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作者名：orange | 作成日時：2023年12月29日 23時
