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「大倉、下がれ!」
声と同時に撃ち込まれる銃弾。身を翻したマルはそのまま木の陰に隠れた。現れたのは横山さん。俺を後ろに庇いながら、マルが隠れた所から銃口を外さない。
「出てこいよ。」
横山さんの呼びかけに素直に姿を現したマル。
「やっぱりグルやったん?」
「グルではない。セレーネの依頼や。大事な祖国には貢献せんとあかんやろ?」
「へぇ。俺、この国のために生きろってあんたに散々教育されたんやけど。」
「仕事やったんでね。」
「そう。じゃ、敵側の横山さんはここで撃つわ。」
緊張が走る中、再び口を開いた横山さん。
「お前も来るか?」
「…は?」
「この国から逃がしたる。」
一瞬マルの表情がゆがむ。
「もとの国に戻れ。母親のことも何とかなる。」
「何を…」
初めて見たマルの表情。動揺した…?でも次の瞬間、複数の敵がその場に現れた。
「ヨコ!すまん、結構おる!」
「横山くん、あとよろしく。俺疲れた。」
敵に続いて、庇ってくれた3人も姿をあらわす。良かった、無事やった。
「疲れてる場合か!あ、マル!」
俺に向かってくるマル。咄嗟に銃を構えたけど、あまりの速さに見失い、次の瞬間には突進されていた。
「え…」
そのまま態勢を崩し、地面に打ち付けられるのを体が身構える。でも、いつまで経っても体は宙に浮いたまま。
「しまった。」
マルの声。腕を一瞬引っ張られたけど、すぐに引っ張ってくれた手が離れる。
「ウッ…」
聞こえたのはマルのうめき声。
(マル…?)
そのまま斜面を転がり落ちる。横山さんが俺を呼ぶ声。でも受け身を取って転がる勢いがおさまるのを待つしかなかった。
どれくらい経ったのか、目覚めると辺りは一面落葉でいっぱい。細い川が近くに流れ、手前に洞窟とまでは言えないが、小さな洞穴がある。
「助かった…」
あちこち痛い気もするが、大きな怪我はない。背中のリュックが多少クッションになったんやろうか。
リュックから懐中電灯と拳銃を取り出す。持っていたものは転がっているうちに何処かにいってしまった。
「まぁでも、よう無事やったわ。」
救助が来るか敵が来るか。不安はあるけど、日が沈もうとしている時に動くのはおそらく良くない。
身を潜めるために洞穴に近づき、懐中電灯で中を探る。
入口は岩でデコボコだが、中の床は平らになっており、休むのにちょうどよさそう。居場所を確保出来ることに少し安心して、中に足を踏み入れた。
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作者名:orange | 作成日時:2023年12月29日 23時