15 緑 ページ15
緑サイド
「よーし、荷物もオッケーやし、服装もバッチリや。行くぞぉ!」
遠足のようなノリに拍子抜けしたけど、3人の動きには隙がない。車に乗り込み国境を超えるため山道に入る。
「…静かやな。」
「静かすぎるやろ。」
村上さんの呟きにヤスさんが答える。その時大きく車が揺らいだ。
「クッ…防弾タイヤやねんけどなぁ。お前ら、ちゃんとつかまっとけよ。」
そう言った村上さんは、道から外れて森の中に突っ込んていく。
「ブレーキが効かん。何や腕のいいスナイパーがおるな。」
マル…
ふと浮かんだ名前。あいつ、まさか俺を追ってんのか…
「よしよし、落ち着けぇ。」
木にぶつかりながらスピードを和らげていく村上さん。緊迫した場面のはずやのに、いつもの明るい声に不安が半減する。しかし、すごい技術やな。
「みんな無事か?」
車がようやく止まり、村上さんが声をかけてくれる。誰も怪我はなく、ある程度の荷物を持って、ボロボロになった車から外に出た。
「敵は?」
「こっちに向かってるんちゃう?はよ動こう。」
「ん。森で視界が狭い。用心せーよ。」
銃を構えながら走る。しばらくして、辺りに少しの違和感を感じた瞬間、村上さんが動いた。
「引き付ける。お前ら先に行け。」
小声で素早く出された指示。村上さんが違う方向に走り出したと同時に銃の音。
「行くで。」
「援護は?」
「大丈夫や。」
さらに走っていると、新たな気配に今度はヤスさんが別の方向に走りながら敵を誘う。
森の中に響く銃声。2人は無事なんやろうか。
「大倉さん、このままこの方角に進んで。横山くんが待ってる。」
「でも…」
「ええから。」
次の瞬間、亮さんは後ろを振り返って銃を発砲する。小さなうめき声。
「進め!」
その声に後押しされて前に進む。みんながかばってくれたんや。何とかして横山さんに会わないと。
周りに意識を張り巡らせて走りながら、ふと強い殺気を感じて立ち止まった。
誰かいる。
銃を構えながら暗闇に目を凝らすと、ゆっくりと近づく影。
「マル…」
片手で真っ直ぐに銃を構えた冷酷な瞳。
「行こか。」
抑揚のない声。
「無理やと言ったら?」
「抵抗するならここで撃つ。」
その言葉に銃を握る手に力を入れた。
「俺に勝てると?」
マルの言葉に汗が流れる。
どうする…逃げるのは不可能や。マルとの距離が縮まる。このまま一旦捕まって…
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作者名:orange | 作成日時:2023年12月29日 23時