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14 橙 ページ14

俺に色々と世話をやいてくれた横山さん。頭の回転がはやくて、でもなんや懐かしい、人の気持ちにすっと入って来る人やった。

「母親は俺が連れてきた。」

そんな告白に殴りかかったこともあったけど、職場の上司と称した横山さんに、母さんは優しい目を向けていた。覚えていないだけなのか…

「…」

俺は今、何のためにこんな事をしてるんや…。このままこの瞬間に命を絶ったら…母さんと一緒にこの世から消えて…

「丸山さん。」

「ん。どこまでわかった?」

「大倉さんは敵国のスパイの手に渡ったようです。」

「敵国?」

セレーネに大倉がターゲットにされていた?

「狙いは?」

「わかりません。」

ボスが言い淀んでいた理由が関わってんのか。あいつ、一体何者や…

「横山さんは?」

「こちらもわかりません。パッタリと消息が途絶えました。素性についても調べましたが、特に気になる点はありません。…もしかして、敵国のスパイだったとか?」

「ありえないことではないな。」

「もう一度調べてみます。」

「…無駄やろう。そんな簡単に出てくるんやったらとっくに捕まってる。」

「はい。」

「2人ともセレーネと関係してると思って動くべきやな。早々に向こうに行くやろう。」

横山さんの実力はかなりのもんや。俺一人でいけるか…

「敵国のスパイにはアジトがあるんか?」

「最後に大倉さんを確認できたのは、街の商店街です。消え方からして地下にいるかと。手荒な手段でよければ、数か所おさえている怪しいところは潰せますが。」

「政府連中は動いてないん?」

「動いてはいますが、動きに統制が取れず、難攻しているようです。」

どうせボスの信者と反対勢力が揉めてるんやろ。政治家なんて、くだらない。

「俺が行くわ。使える奴を3人用意して。あとは適当に後方支援頼む。」

「わかりました。」

横山さんと大倉。裏切りなんて山ほど見てきたし、その処理にも散々あたってきた。

「くだらんな…」

遠い昔にあった愛国心は、すっかり枯れてしまった。無駄に死んでいくなんて馬鹿らしい。

…いや、目的もなく生きているくらいなら、あいつらの方がマシかもな。

「マル、お前が行くんか。作戦は?」

ボスへの連絡。今回の任務は作戦も経過も細かく報告するように言われている。

考えても何もない。与えられたことをこなすだけ。俺にはそれだけでいい。

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作者名:orange | 作成日時:2023年12月29日 23時

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