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「大変やろうけど、ちょっと休めたか?」
穏やかな口調。正直疑う気持ちはまだあるけど。村上さんはきっと、とてもあたたかい人なんだろうと思う。
「ありがとうございます。まだ良くわかっていませんけど、きっと命がけで守っていただいているんですよね。一昨日の銃撃戦もみなさんが?」
「まぁな。おたくのボスに敵対する組織がずっとあんたを狙ってたんや。いよいよって時にヨコが動いた。」
「そうですか…」
「すまんけど、結構切迫してる。これからの話、してええか?」
「はい。」
もう自分はこの人たちに頼るしかない。生き残って何になるかわからんけど、その道があるのなら進んでやろう。
「とりあえず、あんたをセレーネに送り届ける。」
「はい。」
「ほんまにそれでええか?」
「はい。」
「ん。そこに依頼主がおる。あんたの素性を大まかに話せということやから伝えるわ。大倉さんは誘拐されてこのマカリオスに来た。戦争孤児ではない。」
「え?」
「あんたを誘拐することによってセレーネはこの国に手出し出来んくなったんや。」
「それは…どういう…?」
「セレーネでは極秘で行っていた化学実験が成功した。それがあれば、小さな国1つ支配する事なんて簡単にできる。」
「化学実験…?」
「恐ろしい兵器の開発や。時の首相はそれが人類にとって不幸な物だと判断し、すべて破棄するように命じた。でも、開発者は素直にすべてを捨てることができなかった。」
「え…今も残ってるんですか?」
「そう。でも、開発者はその研究成果を隠した。」
「隠す?どこに?」
「自分の息子に。」
じっと俺を見る視線。まさか…
「そう。その息子があんた。」
「え?いや、俺そんな…」
「開発した博士は恐ろしい天才や。あんたがその情報にどう関わっているのか、謎のまま命を絶った。」
「命を…?」
「そう。博士はもうおらへん。亡くなる前に、あんたがキーパーソンであるという情報を難しい暗号にして、一部のもんしか見られへんネット上に流してる。」
「なんでそんな事…」
「天才の考えることはよぉわからん。あんたは博士の知人に預けられていた所を攫われた。残念ながらセレーネでは暗号を解けるやつはおらず、あんたの重要性もわからんままやった。」
「じゃあ…ボスが…」
「そうや。一番乗りはお前が父親のように慕うことになるあいつ。城島や。」
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作者名:orange | 作成日時:2023年12月29日 23時