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1 緑・橙 ページ1

緑サイド

「お前さ…」

「なに?」

「…ええわ。」

次の瞬間に鳴り響く銃声。しらけた様子で目の前のターゲットが倒れるのを見ている。

「あと頼むわ。」

倒れた相手の横を平然と通り過ぎる背中。しばらくするとバイクの走り出す音が聞こえる。

「はぁ。」

今日は俺の仕事のはず。いつの間に耳に入ったのか。別の依頼がないときは、こうやっていつもあいつが手柄を横取りする。

バイクが向かうのは何処なのか。任務後は適当に女遊びするという噂は聞いたことあるけど。ま、そんなことどうでもええ。

「大倉さん!」

「おっそ!お前ら遅いねん!」

「すんません。あとはやっときますから。」

「これ、マルやし。」

「え…」

続く言葉を待たずに自分もバイクに向かう。タバコに火をつけ、夜空を見上げた。

ボスの指図か何なのか。過保護もいい加減にしてほしいわ。

無感情なマルの背中を何となく思い出しながら、やり場のない気持ちにため息をつく。

考えてもしょうがない。俺は言われたことをするだけ。

バイクに跨り、重たい気持ちを振り払うように一気にスピードをあげ、街に向かって走り出した。



橙サイド

「なぁ、ええやん。」

「もぉ、マルちゃんしつこいし。」

「ええやんかぁ。なぁ、行こ?」

「え〜…だってマルちゃん、私だけちゃうやろ?」

「そんなことない。今はお前だけやで?」

お前という言葉に途端に顔を赤くする。

「な。ほら手ぇ貸して?ここ。」

「なに?」

「めっちゃドキドキしてんねん。感じる?」

「…」

「な、ええやろ?」

「…もぉ。」

柔らかい身体に手をすべらせる。波打つ曲線。何も考えなくていい時間が出来るだけ長く続くように集中する。でも、それはいつも成功しない。

「マルちゃん、また来て?」

「ん。約束。」

柔らかく微笑む笑顔。でももう会うことなんてないやろ。冷え切った頭は女のことなんてすぐに忘れ、山のような依頼のメールを確認していく。

「こっから近いのは…ん?」

ボスからの電話。いつもの声が俺の所在を確認する。

「じゃあ、事務所来るのは明後日か。」

「…うまく任務が完了すれば。」

「大丈夫やろ。ほな待っとくわ。」

あっさりと切れた回線。しばらくその場に立ち止まる。何とはなしに見上げた空は、俺の気持ちとはかけ離れた清々しい色をしていた。

いつものこと。別にどうでもええ…

2 緑→



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作者名:orange | 作成日時:2023年12月29日 23時

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