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「あ、ヤスから電話。ちょっと路肩に停めますね。」
章ちゃんの声が遠くに聞こえる。何を言っているのかわからないけど、楽しそうに答える大倉さん。
「うん。俺も展覧会いけると思ったで。」
僕の作品の話かな?大倉さんの方を見ると、同じタイミングでこっちを見た大倉さんが、ニヤッと笑う。
「あ、ヤス?俺、丸山さんに告白したし。手ぇ出さんといてな。」
え!と思ったのと同時に、電話の向こうから章ちゃんの叫び声のようなものが聞こえてくる。
「嫌。なんで代わらなあかんねん。絶対に嫌。あ、切れた。なんやねん…」
すると、今度は僕のスマホが震えだす。
「あ、章ちゃん。」
「え!」
「もしもし。」
「マル!!」
「はい!」
「どうすんの?」
「え?」
「付き合うの?」
「いや…あの…ちょっとまだ混乱してて…答えられてないんです。」
大倉さんを隣にして、こんなこと言うのもどうかと思いながら、章ちゃんには素直に自分の気持ちを説明していた。
「そうか…。ゆっくりでええから、気持ちに向き合ってな。」
「はい。」
「あいつ、めっちゃええ奴やし。それは俺が保証する。」
「章ちゃん…」
「あいつも色々あったから、マルのこと受け止めるだけの器量はあると思うねん。ゆっくりやけど、前向きに考えたって。あ!プレッシャーかけるつもりないで?それはマルの自由にしーや?」
「はい。」
相変わらず優しい章ちゃん。大倉さんはもちろん、僕の気持ちも尊重してくれる。
「あ〜…あとさ。」
「はい?」
章ちゃんの珍しく悩んだような声。どうしたんやろ?
「実は俺も、マルのことめっちゃ好きやった。」
「え?」
今日は一体何の日?やっぱり夢見てる?
「章ちゃん?」
「はは。ごめんな。色々あった日に詰め込んで。でもな。俺は大倉の好きには敵わへんと思ったから、恋愛の好きではないようにした。けど、なんか…ちょっと今回は…ま、ちょい悔しいから一応報告。」
章ちゃんの言葉にやっぱり答える言葉が見つからない。
「ごめん、困らせたな。まあ、だから、大倉より俺のほうがよければ、いつでもどうぞ。」
明るい言葉。こんなふうに思ってもらえたなんて、幸せやんか。
「うれしいです。ありがとう。…こんなことしか言えなくてごめんなさい。」
「ううん。うれしいって言ってもらえてうれしいわ。また教室で会えるの楽しみにしてるし。」
「はい。僕も。」
「じゃあ、気をつけて帰りや。」
「はい。」
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orange(プロフ) - いつもありがとうございます。この場所があって、たくさん倉丸ちゃんに浸れるので、日々の活力になっています。また見に来てください! (2023年1月23日 22時) (レス) id: 12b1e8c154 (このIDを非表示/違反報告)
kkoyanagi(プロフ) - お疲れ様でした。いつも物凄く楽しみにしています、この二人のお話が少ないので強火の倉丸担オタクとしては最高に嬉しいです。次回作も楽しみに待ってます。 (2023年1月23日 8時) (レス) @page32 id: 46c9530258 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:orange | 作成日時:2023年1月7日 21時