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「まぁ、思い切って付き合ってみるのも手かもしれんけどな。こればっかりは二人じゃないとわからんわ。」
章ちゃんに優しく頭を撫でられて考える。大倉さんは本当に僕のことを大切に思ってくれてるんや。
僕は、それにどう答えたらいいんやろう…
◇
「電車は初めてですね。」
「はい。だって…」
「ん?」
「いや。大倉さん、あんまり電車に乗らないほうがいいかなと思って。」
「なんで?」
「乗ってみたらわかる。」
「毎日乗ってるけど。」
「ハッ!危険!!」
「(笑)!なんも危険なことないよ。」
笑ってるけど、こんな男前が電車に乗ってたら、ちょっとした騒ぎになると思うんやけど。僕が守らないと!
「丸山さん、こっち。」
あれ…?
電車の中。土曜日の朝は通勤とお出かけの人で少し混んでいた。どうやって大倉さんを守ろうかと思っていると、ドアの隅に引っ張られて、大倉さんが周りとの壁になってくれる。
「あの…」
「ん?」
「えーと、僕は大丈夫ですよ。」
「だめです。」
「でも…」
「だめ。俺のなんで。」
いや、まだ付き合っているわけではないのにいいの?と思いながら、うれしい気持ちは抑えられない。僕ってこんなに女子っぽい性格やったかな。少し見上げると大倉さんの端正な顔立ち。
「外、見たい?」
「いいえ。」
外よりも、大倉さんを見ている方が楽しい。とは言えないけど、ついつい見惚れてしまう。
〈ねぇ、見て。めっちゃ格好良くない?〉
周りの乗客のヒソヒソ話。ほら、やっぱり。大倉さんのことをチラチラ見ながら女性たちが静かに騒いでいる。
「丸山さん、騒がれてますよ。」
「は?」
「かわいいからしゃあないけど。」
「あの、騒がれてるの、大倉さんですよ。」
「はは。違いますよ。」
「いや、どう考えても大倉さんでしょ。鏡見たことあります?おっそろしく格好いいんですよ、大倉さん。」
「フフッ。」
ニヤリと笑う大倉さん。
「そんなこと思ってくれてたんですね、丸山さん。うれしい。」
やられた…。顔の温度が上がる。でも、スマートな返しをして笑う大倉さんはこの上なく格好よかった。
「大倉さんには敵いません。」
「そりゃそうです。俺の想いがそれだけ強いということです。」
ほんとに敵わない。でも全く嫌な気がしない。いや、ほんとにうれしい。
目的の駅についてしばらく歩くと、人で賑わっている陶器市に到着した。
今日は、最近人気のある北欧の陶器を見学するのが目的。
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orange(プロフ) - いつもありがとうございます。この場所があって、たくさん倉丸ちゃんに浸れるので、日々の活力になっています。また見に来てください! (2023年1月23日 22時) (レス) id: 12b1e8c154 (このIDを非表示/違反報告)
kkoyanagi(プロフ) - お疲れ様でした。いつも物凄く楽しみにしています、この二人のお話が少ないので強火の倉丸担オタクとしては最高に嬉しいです。次回作も楽しみに待ってます。 (2023年1月23日 8時) (レス) @page32 id: 46c9530258 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:orange | 作成日時:2023年1月7日 21時