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作品ばかり見ていて、それを誰が作ったかなんて気にしていなかった。

そうやって見ていくと、他にも彼の作品がたくさん。有名な人なんかな。

言われたとおりゆっくりと見学し、全てを観終わる頃には結構な時間が経っていた。

「疲れた。」

初めてなのにかなり集中して観ていたのだろう。会場を出て少し休もうと、出口に向かう。

「ありがとうございました。」

受付の人にそう言われ、ふと案内の広告を見ると、作品の販売について書かれている。

「あの、ここの作品って買えるんですか?」

「もちろん。気になったものがありましたか?」

「あの、でもとても高いですよね?」

「作品にもよりますけど、ここにあるものは日常使い出来るものをコンセプトに作られていますので…。ちなみにどちらが気になりましたか?」

親切なその人につられて、さっき見た一輪挿しのことを言うと、全然自分でも買える値段に驚く。

「じゃあ、それ、ください。」

展示されているものを買うなんて初めて。でも…

「あ、すみません、こちらの作品、複数購入希望がありまして、抽選となるのですがよろしいですか?」

結果は後日連絡されるらしい。

「人気なんですね。」

「そうですね、彼の作品はどれも複数希望があります。」

「有名な方なんですか?」

「たまに色んな所に出品されていますが、陶芸家ではなく、他に仕事をされながら自分のペースで作っておられます。メジャーではないですけど、彼が出品するとなると足を運んで買い求める方が少しずつ増えているように思います。」

そうか。陶芸家と言っても、きっと食べていける人は少ないんだろうな。何かが欲しいと思ったのは久しぶり。抽選、当たるやろうか。当たったらええな…



「丸山!!お前、やるなぁ!」

難攻不落と言われていた営業先に足繁く通い、やっと契約に持ち込んだ。

オフィスから拍手が湧き上がる。軽くお辞儀をしながら、苦労が報われたことにほっとした。

「お前、ほんまに営業に向いてるんやな。」

「いや、村上さんに言われたくないです。」

休憩中に会った村上さんは、ようやったと労ってくれる。だんだん兄貴みたいに思えてきた。

「今日は課をあげての飲み会やろ?」

「はい。でも自分のためとか、ちょっと気が引けます。」

「そんなもん、楽しまな損や。明日は休みやし、しっかり飲んでこい。」

「ふふ。はい。」

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作者名:orange | 作成日時:2022年12月27日 14時

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