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「丸山さんは気を使いすぎです。楽しいときもあればしんどいときもある。無理しなくていいんですよ。」
頭を撫でるぬくもり。そんなんされたら泣いてしまうやんか。
「…ありがとう…ございます。」
もう一度頭をポンポンとされ、静かに運転に集中する大倉さん。僕は…この人の近くにいて大丈夫なんやろうか…こんなに優しくて、僕はどうしたら…
「ちょっとこのカフェで待っててほしいんですけど。」
「え?」
「先に確認しに行きたくて。いいですか?」
「それはいいですけど。」
「あ!なんか感じのいい店員さんにニコニコするのはダメですよ!」
「え?ふふ。どういうこと?そんなんしませんよ。」
急いで車に乗り込む大倉さん。そんなに慌てんでも。大倉さんが慌てる姿って結構貴重やな。いつも冷静沈着やもん。でもきっと、彼女の前では違うんやろ…
「はぁ、あかん!なんか飲も。」
カフェは朝が早いのに今日も盛況。あのお兄さんは…いた!朝から元気そうで何より。…いや、何してんねん。そういや僕、面食いやったな。遊んでくれる相手も…
「はあ…。何を考えてんねん…」
深く息を吸い込む。空気がおいしい。ゆっくりとした気持ちでテラスの席に座る。きれいな緑が広がって、そこに反射する光が宝石のように輝いている。
「落ち着く。」
ざわざわしていた心が、何かに撫でられたように穏やかになる。
「ここに住もうかな。」
あんまりマンションはなさそうやから一戸建てかぁ。通勤を考えると結構大変や。車がいるな。頑張って運転の練習をするか…
それから、どのくらい時間が経ったのか、久しぶりに何も考えずぼーっとした。なんだか気持ちが軽いような気がする。
「丸山さん、お待たせしてすみません。…少しゆっくりできました?」
優しく微笑んでそんなふうに聞いてくれる大倉さん。もしかして…
「大倉さん、もしかしてわざと…」
「いや、先に作品を見ておきたかったのは本当ですよ。でも少しゆっくりしたいのかなと思って。」
やられた。なんて気のつく人なんやろ。
「ありがとうございます。スッキリしました!」
「それはよかった。」
うれしい気持ちで車に乗り込む。なんだかワクワクしてきたな。あ、でも…
「そうか…」
「ん?」
「せっかくだし、章ちゃんも来てもらえたらよかったですね。」
仕上げを手伝ってもらったんだし、先生とも話がしたかったな。でも、いつも通り今日はレッスンがあるから無理だ。
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作者名:orange | 作成日時:2022年12月27日 14時