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「あ!でも俺はあかんで。俺には心に決めた人がおるからな。」
満足そうに微笑みながらそんなことを言われても、反応のしようがないんやけど…
「お前には会わせてもええかなぁ。どうしょっかなぁ。」
「…幸せそうですね。」
ぼそっと呟いたその声に、村上さんは真剣な声で答える。
「幸せやで。幸せは自分で求めなやってけーへん。」
きっぱりとした言い方。真っすぐで勢いのあるその言葉に、思わずうつむいてしまう。
「求めても…そんなん…」
「頑張ってそれでもあかんかったらしゃあない。何でも自分の思い通りになんかならへん。子どもみたいに我を通しとっても幸せなんてけーへんしな。」
ハキハキとした言葉に、これまで心を覆っていたモヤモヤが払われるような感じがする。
「子どもか…。僕、確かにそういう所あるかも。」
「悲劇の中におってもしゃあない。俺はまだ片思い中やけど、毎日そいつのこと考えて、会えて話せたらそれはもう幸せや。」
曇りなくそう言い切る村上さん。なんて素直に生きているんやろう。何でも暗く考えてしまう自分。暗闇にいる俺からは、村上さんが本当に輝いているように見えた。
「僕も…そんな風に考えられたらな…」
思わずそんなことを呟く。
「出来る出来る!」
「え…、そんな簡単に言われても…」
「ま、お前頑固そうやから時間はかかるやろうけどな。だから俺がついててやるわ。」
僕のことをズバズバと言い当てる村上さん。
「なんでそんなに僕のことを気にしてくれるんですか?」
「ん〜…縁かな。」
「縁?」
「お前、いっつも俺の前で暗い顔をしよる。」
「え?」
「いっつも営業でハイテンション、職場でも飲み会でも周りを笑顔にする。それやのに、ふとお前を見ると表情がないんや。こいつ、無理してんなぁって。」
昔付き合いのあった友達とは、仕事が忙しくてすっかり疎遠になっている。それに、本当の自分のことを話せる友達はいなかった。…求めてもなかったけど。
「ありがとうございます。なんか、うれしいです。カミングアウトまでしてくれて…」
「信用できる奴やと思ったからな。裏切られたら、自分の目が節穴やったってだけや。」
すごいな。そんなに年齢も変わらないのに。なんでこんなに達観しているのかとても興味がわく。
「これからもよろしくお願いします。」
「なんや改まって。じゃあ、リハビリ頑張るか!」
「ふふ。はい。」
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作者名:orange | 作成日時:2022年12月27日 14時