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「ｳｳｯ…」
大きな雷の音に身をすくめ、僕の胸に隠れようとする。どれくらいたったのか、嵐が去る頃には、大倉さんは疲れてぐったり。呼びかけても返事がない。気を失ってる？
「ふぅ…どうしよ。」
とりあえずちゃんと寝かせてあげようと体を動かすとようやく大倉さんに反応がある。
「あ、大倉さん？起きましたか？」
「ﾊｯ…あ…え？」
「あの、えーと、嵐が怖かったみたいで、その…」
「あっ！すっ、すみませんっ！！」
バッと体が離れて、さっきまで温かかった体が急に冷えるような感覚になった。
「あの、ほんとにすみません。その…雷が苦手で。」
苦手というか、それだけであんなに震えるものなんだろうか…
「昔、何かあったんですか？」
「…いえ。あの、ほんとにすみません。」
「いや、なんも謝ってもらうことなんてないですよ。」
混乱しているのか、いつもの余裕のある姿はなく、そのうち俯いて固まったように一点を見つめる。その瞳は、暗い車内でも分かるくらい色がなかった。
どうしていいのか分からずしばらく黙っていると、大倉さんの呟きが聞こえてきた。
「知り合いが…」
「ん？」
「知り合いが死にました。私のせいで…」
「え？」
思わぬ言葉に耳を疑う。
「わたしは…あの時……」
頭を抱えてうなだれる大倉さん。
「あの、大倉さん、落ち着いてください。僕で良かったらいくらでも聞きますが、僕が聞いてもいいことですか？」
大倉さんが我に返ったように顔を上げて僕を見つめる。何を思っているのか、次に出てきたのは思いもかけない言葉。
「…はい。丸山さんに聞いてほしい。」
思わず嬉しさが込み上げた。こんな僕を頼ってくれることが嬉しい。
僕が頷くと、大倉さんはまた俯いて、ぼそぼそと生気のない声で話し始めた。
「その日はとても晴れていたんです。今日みたいになんの心配もなく、ただ青空が広がっていた。
わたしは大学のとき少し留学をしていて。ヤスの勧めで陶芸のサークルに入ってたんですけど、そこには地域から様々な年齢や国籍の人が教えに来てくれていました。」
初めて知る大倉さんのこと。留学してはったんや。
「その中で気の合う数人でいつも集まってて。よく海に行っていました。知り合いはサーフィンが大好きだったので。わたしは海は好きだけど、入るのは怖くて、いつも砂浜で海を眺めながら彼を待っていました。」
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作者名：orange | 作成日時：2022年12月27日 14時
