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そんな話をしていたのがひと月前。大きな案件を抱えて怒涛の忙しさを過ごし、陶芸にも行けないという苦痛のひと月。
「あ、先生？」
「丸山さん、忙しそうやね。」
そんな時に安田先生からの電話。優しい声に癒やされる。
「はい。全然行けなくて、めっちゃストレスたまってます。」
「はは！こっちはいつでも待ってるから、来れるときにおいで。」
「はい！」
「それからあの犯人、捕まったって連絡、こっちにも来たわ。だから安心して来てください。でも不安やったら送り迎えするし。」
「そんな、先生にそんなことさせられません。個展も近いのに。必ず観に行きますから。」
「ん。会えるの楽しみにしてる。大倉も全然来れてないわ。丸山さんに会えるの楽しみにしてたで。」
「大倉さんには本当にお世話になって。あの後もちょくちょく連絡もらっていました。」
「あいつ、丸山さんのことほんまに心配してたから。」
何気なく言われたその言葉に気持ちが一瞬ぐらつく。でも、あまりに小さなぐらつきだったから、自分でそれが何だったのか気づく間もなく、先生との話の中で埋もれていった。
◇
「ほんま、何がしたいんかわからんな。」
「ん？」
会社の昼休憩中。コーヒーを買いに来ると、企画部の数名が集合している。
「なに、どうしたん？」
近くの知り合いに聞いてみると、企画部の新課長のことらしい。
「色々良くない噂が出てるみたいやで。」
「へ〜…なんか強引な人なん？」
「いや、わからん。今日から出社で何がわかるもんでもないやろと思うけど。」
確かに。噂なんて誰かの悪意が含まれるもんやしな。
「丸山ー！」
オフィスに戻ると課長からの呼び出し。
「企画部からお呼びがかかってる。」
「え、私ですか？」
「いや。俺。」
「…ん？」
「でも、俺忙しいからお前、頼むわ。」
「いや、駄目でしょ。」
「そんなもん、用があるんやったらお前から来いって言って来い！」
「はあ？もー…そんなん子どもじゃないんですから自分で…」
「俺は行かん。」
「仕事ですよ。」
「忙しいから代理や。」
「はぁ。わかりました。とりあえず行ってきます。」
まあ、課長が言うのももっともや。いきなり呼びつけるなんて確かに失礼やとは思う。どんな人なんやろ…
企画部に新しく作られた第三課のオフィス。声をかけても、みんな忙しくしていて反応がない。
「あの、すみません！課長は…」
「課長？」
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作者名：orange | 作成日時：2022年12月27日 14時
