群青の星 (ページ8)

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「すみません、体験に来たものですけど…」

営業の時からは考えられない弱気な声で受付の方に話しかける。

「初めての方ですね。丸山さん？」

「はい。」

「どうぞこちらへ。」

通された場所にはたくさんのろくろが置いてある。すでにいくつかのグループが来ており、俺のように一人で来ている人もチラホラ見受けられる。

「エプロンありますか？」

この日のために購入したエプロンを身に着け、座って待っていると講師の先生がゆっくりと作り方を教えてくれる。

「何を作りますか？」

「あ…何を作ろう…」

「特にないのであれば茶碗に挑戦してみましょう。」

小柄で明るい先生。いかにも芸術家という感じで、道で出会ったらちょっと避けてしまいそうな出で立ち。でも話してみるととてつもなく穏やかで優しい。

「安田といいます。」

ニコニコとあいさつをしてくれたその先生に導かれながら、かなりの時間をかけて、ものすごく不器用な茶碗が出来上がった。

「ムズい。」

「ははっ！そうでしょう？でも、初めての作品って味がありますよ。」

「ん〜…味というか何と言うか…、形が怖い。」

「でもすごく楽しそうでしたね、丸山さん。」

そういえば、心が何となく軽い。確かに、すごく楽しかった。

「またしたい…」

「そうですか！？」

知らずに呟いた言葉に安田先生が嬉しそうに声をあげた。

「はい。土に触っていたいです。」

「いいですねぇ！じゃあ、この作品は、また来られたときに渡しましょうか。」

「あの、毎週来てもいいですか…？」

「大歓迎です。この作品は出来上がったときにお渡ししますから、どんどん作っていきましょう。」

何の趣味もなくただ働いてきたから、月謝や材料費など、こだわりなく教室のコースを選ぶ。

「先生は常にいらっしゃるんですか？」

「創作活動の時以外は。最近仕事が増えてきて、自分の工房なのに、弟子に任せることも多くなってきました。」

「え！自分の工房？じゃあうちの村上の知り合いって…」

「あ、僕です。すみません、言ってなかったな。こんな素敵な人に来てもらえてうれしいですわ。」

「え？」

「真っ直ぐできれいな瞳をしてる。今日は僕も楽しかったです。またよろしくお願いします。」

「あ、こちらこそ。」

芸術家の先生にあんなことを言われたら、めちゃくちゃ照れる。いい人との出会い。陶芸の底知れない魅力。週末に楽しみが出来たことで、一週間が早く感じられるようになった。