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「嫌です…忠義様がいらっしゃるのに…眠るなんて…」

「わたしたちにはたくさん時間がありますから大丈夫。」

「ほんとに?」

「本当です。だからお眠りなさい。」

「忠義様…」

「大丈夫。手を繋いでいますから。」

「抱きしめてはくださらないのですか?」

「あなたが望むなら何なりと。おやすみ、わたしの愛しい人。」



「隆平様!心配いたしました!!どちらへ行かれていたのです!?」

必死の形相の従者たち。心配をかけてしまった。

「すまない…実は…」

忠義様は、兄上にあいさつに行ったとき、俺が旅立ったと知ると、偽の書を作って、俺の後を追う許可を得たらしい。

「一瞬パニックになり、兄上様に詰め寄ってしまいました。後できちんと謝ります。書は、あなたが他国に人質として狙われていることを伝える密書にしました。」

「兄上はとても疑り深い所がおありなのに、よく信じてくださいましたね。」

「それは少しばかり偽装を…」

「偽装?」

「わたしのことや、書の真偽について、信用できる情報を作り上げました。気持ちが焦るばかりで、かなり強引でしたが、上手くいきました。悪魔のことを話してしまえば早かったのかも知れませんが…」

その話はしない方がいい。知ってしまえば、必要のないことまで背負うことになる。瞬時にそう考えてくださった忠義様の心遣いにうれしくなる。

「では、参りましょう。」

従者にも同じように伝え、俺を救ってくださった忠義様が同行することをすんなり受け入れてもらった。

「マル!」

「マル兄様!!」

忠義様と目的の国へ赴き、貿易などについて話をまとめたら、心配しているだろう兄弟のもとに急いで帰る。

「兄上、ご心配をおかけしました。章ちゃんも亮ちゃんもごめんなさい。ヒナ様も、そのように泣かれては困ります。」

「マルのせいではありませんが、本当に心配したのですよ。ようやく文が届いたときはみんなで泣いて喜んだのですから…」

「あなた様のおかげです。忠義様、わが弟が大変お世話になりました。」

「とんでもない。大切な婚約者ゆえ、当たり前のことです。」

「マル、待っていてよかったですね。」

「はい、ヒナ様。」

「マル兄様を泣かすなんてどれだけ酷い人なんだろうと思っていたのに…」

「これ、どっくん、やめなさい。」

「僕も、マル兄様は僕が一生守っていくと誓っていました。」

「すみません…国事で動けず、連絡も出来ず…」

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作者名:orange | 作成日時:2022年1月30日 19時

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