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「隆平様、こちらが今日の宿となります。」

旅立って2日。目的の国へは3日ほどで着く予定。兄上に連れられての旅はいつも部屋に閉じ込められていたけれど、ふらりと町を歩くのはとてつもない解放感で心地よかった。

「あれ…こんなところに傷がある。」

森を抜けるときに草木に当たったのか、かすり傷がいくつかある。

「馬を飛ばしすぎたかな…。気を付けないと。」

「あれぇ!きれいな顔してるねぇ!油断していると、男にも女にも襲われるよ。」

豪快な声に我に返ると、目の前には湯気のたった美味しそうな料理が山のように用意されていた。

「隆平様、食べきれますか?」

「が、頑張ろう!」

町の人々は明るく、どの土地の人も戦争が終わって生き生きとしている。これからこの国々が益々発展していくために頑張らないと。

「ふぅ…疲れた…」

部屋に戻る。着替えをしようとシャツを脱ぐと…

「え…なにこれ…」

全くぶつけた記憶がないのに、腕の辺りに大きなアザが出来ている。

「痛っ…」

そっと触れると痛みが走った。従者に言うべきか、しかし、心配をかけるのが憚られた。ヒナ様から預かったお守りをそっと当てると、幾分気持ちが落ち着く。そしてこの指輪。

「忠義様…」

何度繰り返しただろう、この名前。名を呼ぶだけで心が強くなる。

「どこにおられるのだろう…。どうか、あなた様がご無事で過ごされていることを願います。」

翌朝、従者にアザを見せようと思いながら着替えをする。

「…あれ?」

アザがない。昨日あんなにくっきりと見えていたアザが跡形もない。

「怖…」

体を見渡すと、細かい傷も無くなっていた。思わず兄上の話が思い出される。

「いや…気にすることはない。必ず上手くいく。」

とりあえず出発の時間。馬に乗り、移り変わる景色を見ながら移動する。

「気持ちがよいな。…ん?」

ふと見渡すと、周りに誰もいない。

「え…?おーい!」

景色もいつの間にか草原が広がっているだけ…

「なに?どこ?」

呆然としていると急に辺りが暗闇に包まれた。

「わっ!な…っ…」

訳がわからず言葉を失う。

「きれいな魂…」

「え?」

体に響く恐ろしい声。

「1万年に1つ、あるかないかの…美しいのぉ…」

「前は逃げられてしまったからの…」

「親の力は恐ろしい。」

「親ではない。あいつのせいだ。」

「ふん。あんな奴どうでもよい。しかし、きちんと印をつけておいた。わたしのものだ。」

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作者名:orange | 作成日時:2022年1月30日 19時

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