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「不思議やんなぁ。おじいさんは紀之って名前で、めちゃくちゃかっこよくて、調べたらちゃんと名前があった。」
「じゃあその人が親代わりなんかな…？」
「たぶん…。自分を意識する前の幼い時から、学問や武道や様々習ってたんやけど、それと一緒に個性というのか、自分というものを殺されていくような洗脳みたいなことかな…そういうのをされてた。」
「え、洗脳？」
「うん。ゆっくりゆっくり進められる洗脳は、本人はもちろん、教えてる方も何をしているのか気づいてない。ゆっくり、深く頭に入っていく。」
「怖い…」
「自分があるようでないような、でも何も自覚はなくて、そんなとき、おじいさんに出会って守ってもらった。」
「よかった…でも、めっちゃ怖いやん。」
「うん。神の御子は国、ひいては世界平和のために生きていた。」
「すごいな…」
「それはおじいさんの頃から変わらない。でも、御子のあり方が100代前くらいからゆっくり変化して、50代くらい前から今の形になった。長い年月をかけて、御子をはじめ、神に遣えるものは洗脳されるようになった。」
「え、何のために…？」
「神の御子の血を引く子は一族に幸せをもたらす。しかし、結び付くのは１人。誰もが権力を求めて御子を奪い合った。神の国なのに、本国も周辺の国も争いが絶えない。御子の一言で周りが恐ろしく振り回される。御子のせいで争奪戦は苛烈になり、戦争にまで発展した。」
「戦争…」
「そう。それに、御子も人間やからいくら修行をするとはいえ、特異な力を常に正しく使えるとは限らない。」
「そうか…」
「うん。だから、御子は自我を奪われ、周りの国は順に子を授かるチャンスを得るという仕組みが出来た。縁がなければ次の国。」
「その長い歴史に反発したのが隆平？」
「反発というのかな…。俺というよりはおじいさんの願いを叶えようとしてたというか…」
「おじいさんの願い？」
「うん。はぁ。でも、自我を持った俺の単なるわがままやったんかもしれへん…」
「え…？」
「神の国…神の御子…。平和をもたらすために、特殊な力を持ち、国のために生きる。その使命を全うしていれば…」
「俺とは出会えてないな。」
「うん。こんなに…生きることが素晴らしいなんて知らずに終わってた。おじいさんが言っててん。人の気持ちのわからない奴が、どうやって平和を作るんやって。」
「神の国は洗脳のおかげで平和だったんじゃないの？」
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作者名：orange | 作成日時：2021年7月6日 7時
