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「家族を…一族を救っていただきました。」
「一族…？」
「はい。前に仕えていた主に、一族共々罪を被せられ、罪人としてこの国に差し出されました。しかし、あなた様が疑問に思い調べてくださったおかげで罪が消え、代わりに主が連れて行かれました。」
「ああ！あの極悪人の下で働いとったやつらか。」
「はい。隠密とはいえ、命を粗末に扱われ、人として下に見られるような生き方はしたくありません。その心を救っていただきました。」
「そうか。人を人とも思わん奴がほんまに多い。まぁ…戦争を続ける俺自身もそうなんかも知らんけどな。」
「…父さん。」
「お前を救うべきやと進言したんは忠義や。」
「はい。存じております。ですので、ご同行させていただき、手助けをさせていただきたいと。」
「そうか。」
「りゅう様のことは全く情報がなく、申し訳ありませんでした。」
「いや…。手当てをしてくれてよかった。お前が首謀者じゃないということもわかった。これからよろしく頼む。」
「はい。」
◇
「忠義様。」
情報を整理しながら帰っていると、屋敷のドアの前に深刻そうな顔をした担当医が待っていた。
「今日のお昼頃、また混乱されて気を失ってから目を覚まされません。眠っておられるだけだとは思うのですが…」
急いでりゅうのベッドに向かう。きれいな顔をして眠るりゅう。
「りゅう？」
呼びかけても反応がない。今日聞いた話のせいやろか…。りゅうがめちゃくちゃ神聖なものに見えてくる。
「とりあえず様子を見るわ。何かあったらまた呼ぶし。」
「わかりました。」
夕食を食べてシャワーを浴びて、りゅうの所へ向かう。腕に閉じ込めるように抱きしめて、そっとおでこにキスをした。
「りゅう…」
俺が…俺みたいなもんが…神の子に触れても大丈夫なんやろうか…。そもそも神の子が恋愛やなんやしても大丈夫なんやろか…。疑問だらけやけど、りゅうを抱きしめたら、そんなことすぐに吹っ飛んで安心感に包まれる。
「おやすみ、りゅう。ちゃんと起きなあかんねんで。」
どれくらい眠ったのか、またりゅうの苦しそうな声。
「逃げて…あか…お前たち…」
「りゅう…」
何度も声をかけて、背中をさすって、なんとか落ち着かせる。はぁ。…なんやろ…なんか…急にめちゃくちゃ寂しくなってきた…。俺の知らんりゅうがいる。嫌や。
「りゅう…ｳｯ…りゅう…」
なんや…情けない…俺、泣いてるわ…一国の王子が、寂しくて泣いてる。
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作者名：orange | 作成日時：2021年7月6日 7時
