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「はぁ…」
結婚式は当然延期。近くにりゅうがいるのに会えない寂しさは本気できつい。
「忠義様。ため息はやめてください。」
「でもー！！」
「りゅうが見つかる前のことを考えてください。」
「それは…それはさぁ…わかってるよ！でも会いたいねん！りゅうに会いたい！！」
(ｺﾝｺﾝｺﾝ。)
「はい。」
「失礼します。忠義様！りゅう様の意識が…」
言われた瞬間体が動いていた。いや、待て。場所わからん。
「忠義様！こちらです！」
慌てて先生に付いていく。宮殿の奥、ビニールに囲われた不思議な部屋。電気の発見から急激に進んだ医療の現場。世界の頭脳がここに集まっている。
「忠義様、すみませんが、消毒をして、マスクと、この帽子と手袋をお願いします。」
りゅうのいる部屋に入る。あぁ…りゅうや。俺の…りゅうが…。涙が溢れて仕方ない。先生にもらったタオルで涙を拭い、そっと近づく。
「りゅう…」
反応がない。呼び続けるように促されて、何度か繰り返す。
「りゅう…起きて。俺やで。りゅう…」
その時、指先がピクッと動いた。
「ﾊｯ！りゅう！俺や。こっちに戻ってこい！」
「ﾝｯ…」
「りゅう？」
ゆっくりと、目が開く。スローモーションみたいなその動きをしっかりと見つめる。
「りゅう…」
瞳を除きこむと、ふと笑顔になるりゅう。
「忠義…」
かすかな声が俺のことを呼んだ。
「りゅう！わかるか？りゅう！」
「ん…」
不思議そうな顔をして俺の方を見ている。まだあんまりわかってないんやろうか…。でも、次第にりゅうの顔から笑顔が消えて、眉間にシワがよる。
「ﾊｯ！…ｸﾞｯ…」
「りゅう？」
奥歯を噛みしめて必死で何かに耐えている。あかん…
「りゅう！大丈夫。もう大丈夫や。お前に暴力を奮うやつはおらん！俺のこと分かるやろ？りゅう！」
「ﾊｧﾊｧﾊｧ…怖い…痛い…助けて！助けて！！」
「りゅう！！」
「失礼します！おい！点滴！」
「はい！忠義様、部屋から出てください。」
「しかし…」
「すぐに処置をしないと傷が開きます。すみません。」
「わかった。」
「助けてっ…嫌っ…いやーっ！！！」
「ｳｯ…りゅう…」
叫び声がこだまする。でもそのうち静寂がやって来た。
「忠義様…すみません…まだ早すぎました。」
「いや…。…様子が知れてよかった。」
「心の叫びが…ずっと我慢していたものが、押さえるものがなくなってそのまま叫び声となってしまっているのでしょう。」
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作者名：orange | 作成日時：2021年7月6日 7時
