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「ヒナ。」
王と国中を捜索しているきみが部屋に来てくれた。
「ｳｯ…きみ…」
「大丈夫や。」
きみがそっと抱きしめてくれる。
「ヒナ、王が目星をつけた。今晩あたってみる。」
「え？」
「たぶん捕らえられてる。表向きは高級料亭。でも裏で色んな所と繋がってるらしいグレーな店や。おそらくそこにおる。」
「なんで…」
「何でかはわからん。王の密偵がようやくそれらしい情報を手にいれた。ここから離れてるから今から出発する。」
「きみ…」
「王と亮様と俺と。無敵やろ？」
「…うん。」
「だから忠義様のこと頼む。忠義様には結果がわかるまで言わん方がええわな。」
「うん。たぶん一緒に行くって言ってきかんと思うわ。」
「そやな…」
「きみ…気をつけてや。」
「わかってる。ちゃんとヒナの所に帰ってくるから。りゅうも連れて。」
「うん。お願いします。」
「ん。じゃ、いってくる。」
「いってらっしゃい。」
もう一度抱きしめてくれて、優しいキスをくれて、頭を撫でて。それから俺の大好きな笑顔でその場を去っていくきみ。かっこええ…。
「りゅう…」
あいつの屈託のない優しい笑顔が思い出される。悩んでるときはすぐにわかんねん、あいつ。でも無理やり笑顔をつくって頑張ってまうねんな。自分よりも周りのこと。あいつのそんな性格がみんなを笑顔にしていく。どうか…どうかりゅうが無事でありますように。みんな、無事に帰ってきますように。
◇
「亮、どう思う？」
「たぶん地下にいますね。りゅう兄は絶対死なさへん。」
亮様が鋭い視線を目の前の屋敷に投げかける。
「まぁ、店主次第やな。うまくいけば話だけで解決するやろ。最悪の場合、店主を人質にりゅうを出してもらうか。」
「王様…あんまり手荒なことをしては…」
「相手次第や。まぁ、そこそこ場数を踏んでる奴なら争い事にはならん。」
「では私と王と数名で入ります。亮様は店の周りを固めるとともに突入の準備を。」
「わかった。」
「ほな、行くで。」
「はい。」
立派な作りの入り口に向かう。
「いらっしゃいませ。」
「王がご旅行の帰りに、この店をみたいと仰っておられる。店主をこれへ。」
「お、王が…？」
「そなた、この国の王を知らぬのか？」
「い、いえ！失礼いたしました。すぐに参ります。」
「さすがと言ったところだな。すぐに冷静な対応ができる。」
「はい。店の作りも込んでいます。かなり儲けているのでしょう。」
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作者名：orange | 作成日時：2021年7月6日 7時
