想 6 (ページ10)

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黒サイド

大阪での仕事は予想以上に上手くいった。それに大倉のお父さんにお世話になったという人にも何人か出会えた。

「立派な社長でした。」

その言葉に大倉がほんまに嬉しそうな表情を見せる。

「会えてよかったな。」

「はい。」

仕事は明日からは神戸、その後は京都になる。大阪最後の夜は２人で真面目にジムに向かう。

「はぁ…隆平喜んでくれるかなぁ～」

「お前さぁ。ほんまにマルのことしかないの？」

「え？ちゃんと仕事のことも考えてたやろ？」

「まぁな。でも、他に楽しみとかあるやん、普通。」

「例えば？」

「例えば…ヒナちゃんと…」

「は？」

「あ…。俺もないわ。」

「なんやねんそれ！」

「(笑)。まぁ、えっか。マルはどうや？」

「昨日の電話、しんどそうやったな…。でもやっぱり、村上さんのことほんまに頼りにしてる感じあるわ。」

「長いからな、あの２人。最初は付き合ってんのかと思ったもん。」

「へっ？」

「ははは。だって、一緒に暮らしてるし、マルになんかあったときのあいつの庇い方は尋常じゃなかったから。」

「へ～。」

「まぁでも、すぐにそれは母性的？父性的なもんやって気づいたし、俺は俺でマルのこと弟か息子みたいに可愛くなってきとって…」

「隆平、ほんまに２人に守られてきたんやな。」

「そうやな。ほんまに大切な存在や。底無しに優しくて、何でも１人で抱え込んで…」

「うん…」

「俺らはあいつがどんな中で生きてきたか知ってるから、優しすぎやってイライラするときもたくさんあった。でも、人に優しく出来るのってめっちゃ強いやろ？」

「うん。」

「マルの強さを守りたくて、２人で会社も一緒に頑張ってやって来たな。」

「同志やねんな、２人は。」

「うん。離れられへんねん。これからもずっとパートナーで、同志や。」

「…格好いいなぁ。」

「いや、俺は大倉のこと、この数日でめっちゃ見直したで。すごい奴やなって。」

「え！まじで！？」

「うん。仕事もスマートやし、何よりマルのこと愛してくれてる。」

「それはもう…人生のすべてです。」

「ありがとう…」

「え？」

「いや…なんかうれしいねん。前にも伝えたと思うけど。」

「俺の方こそお礼を言わな。隆平と引き合わせてくれて、ほんまにありがとうございました。」

「な、照れるやんけ。」

「その真っ赤になるやつ…わざとですか？」

「はぁ！？そんなわけないやろ！」

「村上さんを落とす技なのかと…」

「アホか！」