想 6 (ページ6)

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橙サイド

「まさか信ちゃんが一緒に来てくれるなんて。」

「ははは！なんや久しぶりに一緒の生活やなぁ！」

うちの新しいブランドの宣伝ということで、忠義はもちろん、ゆうちんの手腕が問われる今回の出張。僕は何にも心配してないけど、信ちゃんはなんかそわそわしてた。

「あいつほんま人見知りやからなぁ。俺が行けばええんちゃうんかぁ？」

「そんな心配せんでも。ゆうちんに日本でも活躍してほしかったんやもん。その後の商品の売り込みは、信ちゃんお願いします。」

「ん～…俺の方が営業やねんで？」

なんか色々言いたげやったけど、今回は居残りで頑張ってもらう。…はずやったのに。

「名古屋なんて久しぶりやわ。」

忠義が父さんに相談に行ってくれたらしい。あの取り調べの一件の後で、ただでさえ不安定なのに、2週間も別の土地で、忠義もいない状態で過ごすのは危険やって。

「忠義くん、そうなんだよ…。やっぱりそう思うよな…よし。」

父さんも不安に思ってたみたいで、同行予定だった駿佑よりも村上に行ってもらおうって。

「兄さん、無理しないでくださいね。」

「ん？え？」

僕がそのことを知ったのは前日。帰ってから忠義にもちょっと文句を言ってしまったけど、抱きしめられて、隆平が大事やから俺の最善を尽くすって言われたら、もう何も言えなくなってしまった。

「信ちゃん、どう思う？そんな違う課からさぁ…」

「みんなお前が大事やねん。動ける人間がおるんやから、それでええやろ？」

なんとなくおさまらなくて信ちゃんに愚痴を聞いてもらう。…この感じ久しぶりやな。なんか楽しくなってきた。

「もしかして信ちゃん、ゆうちんが出張やから付いて来る気になったん？」

「うん。それは大きいな。」

「えー！」

「ははは。そりゃマルのことももちろん心配やったで。あんなことなったんやし。」

「そうなん？疑わしいなぁ。」

「それに名古屋の営業部には知り合いもおるしなぁ。」

「ふーん。」

「今回は気楽やわぁ。付き添いやもんな。仕事は専務、よろしくお願いします。」

「えー！ちゃんと働いてよぉ！」

「やっぱ櫃まぶしは外されへんな…」

「ちょっと！聞いてるー？」

「お前、うるさいねん。こっちは旅の計画に必死やねんぞ！」

「やっぱり駿佑の方がよかった！」

「ほー？お前を育ててきた俺よりもあの若造の方がいいと？」

「え…いや…あの…ごめんなさい。」

「ん。よし、行こか。」

やっぱり母ちゃんには勝たれへんな。