想 6 (ページ38)

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緑サイド

箱根神社には時間が早かったのかすぐに駐車出来て、比較的空いてる道を２人で歩いていけた。

「あれ、結婚式？」

「あ、ほんまや。」

隆平がじっと歩いて行く新郎新婦を見ている。何を思っているんやろ。全てを包み込むような、慈しむようなそんな瞳で、俺は隆平に見入ってしまう。

「どうしたん？」

「うん…幸せそうやな。」

「隆平も…結婚式したい？」

「僕？僕なんか、そんなんしたってしゃあないやん。」

「なんで？」

「だって…そんなん忠義がちゃんと指輪をくれたし、家族にも認められたし。」

「そうなん？」

「うん。あの、そんなんちゃうねん。ウェディングの衣装って幸せやなって思ってん。」

「ああ…」

「僕…女性じゃないけど、少し女性の気持ちもわかる気がするし。まぁ…体型のこととか、機能的なことはアドバイスほしいけど。」

「うん、確かに面白そうやな。でも、隆平にも正装してほしいな！」

「ええ！！いい、いい！恥ずかしいし。」

「かわいい隆平がみたいもん。」

「あ…そうか…忠義めっちゃ格好いいやろうな。それは見たいわ。」

「何やねん、それ。」

のんびり２人で話をしながら境内への道を歩いていく。色々考えてパートナーシップ制度や戸籍に関してはまだ進められてない。隆平も落ち着いてきたし、また相談していこう。

「静かやな…」

別に何を信仰しているわけでもないけど、立派な境内には何かしら大きな思いの塊のようなものを感じる。その雰囲気のなかに溶け込む隆平。隆平自身が神聖なもののように感じて、つい腕を掴んでしまう。

「ん？」

「ううん。」

離れてたらどこかに行ってしまいそうって説明したら、ほんまにどっか行ってしまいそうで黙ってしまう。

「忠義、行こう。」

「うん。」

２人で並んでお参りをする。どうか隆平のことをお守りください。俺とずっと一緒におらせてくださいって、目の前の神様に一生懸命お祈りする。隣には隆平の温もり。一緒にこうやっていられることを本当に感謝する。顔をあげると隆平も同じタイミングで顔をあげる。

「ふふっ。」

「ん？」

「何をお願いしてたん？」

「え？」

「長いから顔をあげるタイミング難しかった。」

「待ってたん？」

「うん。夫夫やもん。」

ニコッと笑ってこちらを見上げる隆平はほんまに穏やかで、きれいで、いい人に出会えたんやなって、幸せが身体中に広がる。

「ありがとう。行こか。」

「うん。」