想 6 (ページ14)

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橙サイド

「ただいま。」

誰もいない部屋に声をかける。はぁ…帰ってきた。やっぱり落ち着くわ。自分の家が一番。忠義の匂い、久しぶりや。しんどいけど、荷物の整理だけしてしまおう。洗濯物はこっち。はぁ…忠義…まだかな。あれ…涙が…

「ｳｯ…忠義…ｳｳｯ…」

情けないけど安心したのか涙が勝手に出てくる。もう嫌や。こんな大の大人がちょっとしたことで泣いてしまうなんて。情けない。

「ﾊｧﾊｧ…電話…」

電話が鳴ってる。信ちゃんや…ちゃんと取らないと心配してしまう。

「ﾊｧ…あ…」

ちゃうわ、忠義から…

「ﾊｧ…た…ﾊｧﾊｧ…」

「隆平！？ちょい待ちや、もう着くから。すぐ行くから。」

「ん…ﾊｧ…ごめ…」

「今タクシーに乗ってて、もうマンション見えてるしな。」

「ん…あ…」

手が震えて電話が落ちる。苦しくてうずくまるしかない。落ち着いて。大丈夫。落ち着いて。そうやって念仏みたいに繰り返すけど、何度も嫌な気持ちに飲み込まれそうになる。でも、もうあかんって思った瞬間、フワッと温もりに包まれた。

「隆平。」

「ｳｳｯ…たぁ…ﾊｧ…たぁや……」

「隆平。遅なってごめんな。」

「ｳｳｯ…」

大好きな忠義に一生懸命すがりつく。やっと会えた。やっと。

「ｳｳｯ…もう嫌や…離れんの嫌…忠義と離れたくない。」

「隆平。よしよし。俺もそうやで。２週間、本気で苦しかった。」

「たぁ…」

「隆平。」

忠義の匂いに包まれる。頭からすっぽりくるんでくれて、世界が忠義一色になる。耳を胸に当てられてるから、忠義の鼓動が鼓膜を伝わって、心底安心させられる。しばらくしたら震えも涙もどこかに行ってしまった。

「大丈夫？」

優しい、落ち着いた低音。腕の中で頷くと頭を撫でてくれる。

「よぅ頑張ったな、隆平。」

そんなこと言われたらまた泣いてまうやん。声を出せずにもう一度頷く。

「どうしたん？声、聞かせてくれへんの？」

「ｳｯ…」

「ん？」

「だって…」

「なに？」

「泣いてまう…」

「なんでぇ？」

「ｳｳｯ…たぁが…優しくて…」

「えー、優しくて泣いてしまうんやったら、厳しくしよかぁ？」

「ｳｯ…そんなんちゃうし！」

「ふふっ。腕の中に隆平がおるって最高やな。最高に幸せや。」

「忠義…」

「ん？」

「ありがとう。」

「ふふっ。」

「なに？」

「隆平のありがとうほどうれしいもんはない。」

「はぁ…」

「なんのため息？」

「忠義が優しすぎるため息。」

「なにそれぇ？」