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ふと忠義の方を見る。穏やかに眠って、気持ちよさそうや。
「りゅう…へ…」
「忠義くん、マルちゃんのこと、ほんまに信頼して、ほんまに愛してるんやってわかる。」
「そうですか…?」
「うん。なんか、由貴ちゃんのこと求めてた拓哉さんの瞳や雰囲気を思い出す…」
「弥生さん…辛かったですよね。僕なんかが言えることなんて何もないんですけど…お父さんのこと…」
「それは…ほんまにわからんの。あんなに愛し合ってた人たちの間に入って、自分の気持ちなんてよぅわからんくなったんやと思う。」
「弥生さん…」
「でも、そう…あのあとから誰のことも魅力的に見えなくなってしまったのは確かやね。」
「たった一夜の恋…」
「ふふっ。ロマンチックやねぇ!」
「そうやって笑顔になれる弥生さんは、ほんまに人の悲しみや辛さを知ってる素敵な人です。」
「マルちゃん…泣かすわぁ。」
「弥生さん、よかったらどうぞ。」
「マルちゃん…ウッ…」
きっと…この人は泣きたくてもずっと泣くことができなかったんやろうな。弥生さんの隣に行って、そっと頭を抱きしめる。静かに肩を震わせて、弥生さんはそのまましばらく涙を流し続けた。
「こんなおばちゃんをメロメロにさせて、マルちゃんどうするつもり?」
次に顔をあげた弥生さんは、もうすっかり昼間の弥生さんやった。でも、昼間よりも生き生きしてるように見える。
「ふふっ。弥生さんみたいな魅力的な人やったら迷うなぁ。」
「もう!…はぁ、でも、うん。ありがとう。心がほんまに何十年ぶりに晴れたような気がするわ。」
「よかった!弥生さん、また笑顔が素敵になりましたよ。」
「いやん、もう!あかんよ!忠義くんに怒られる!」
「ふふっ。」
「ん…隆平…」
「忠義?起きた?」
「うん…寝てもーた。あれ…弥生さん…」
「なに?忠義くん。」
「なんか…女の顔になってない?」
「そうやでぇ。忠義くんが寝てる間にマルちゃんと…」
「え!!ちょっと、隆平!」
「忠義、何もないよ。ただまぁ、弥生さんはめっちゃ魅力的やね。」
「へ?ちょっと、ほんまになんかあったん?なぁ!」
「ふふふ。」
「そんなん寝てる方が悪いから内緒!な、マルちゃん?」
「うん。忠義ごめんな。」
「えー!謝るようなことがあったってことぉ?」
「ん…うるさ…。お兄ちゃん、うるさい!」
「なんやねん!お前がわぁわぁ騒ぐから疲れて寝てもーたやん!」
「はぁ?お兄ちゃんがゲラゲラ笑って…」
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作者名:orange | 作成日時:2021年3月14日 20時