オレンジ [気象系] (ページ11)

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ずっと、ずっと一緒にいられますように　Episode.3 ページ11

新年には、神社にお参りして、願い事をするという。
「何て願い事するか決まったぁ？」
殆ど顔が見えない状態でそう問いかけられた。
和也はマフラーとジャケットを身に着けているというより、埋もれている。
「勿論！」
俺は親指を立てて見せた。手袋をしていたから、よく解らない事になってしまったけれど。
「どんな願い？」
「ふふっ、なーいしょっ。和也は？」
「んー？じゃあ、僕もなーいしょっ。」
人差し指を唇に押し当てて、2人で笑い合う。
田舎の小さな神社だから、他に人はいない。
それに、もう元日から4日が経っていた。
昨日まで和也が熱を出してしまったからだ。
実は、施設の他の子は元日に来ている。
僕達を連れてきてくれたいわばお手伝いさんは、自動販売機で温かいお茶を買いに行った。
「智、あの狛犬に…登ってみたい。」
普段やんちゃではない和也も、俺と同じ事を考えていたみたいだ。
俺はニヤリと笑って、「手伝ってやるよ。」と言った。

和也がよじ登るのを手助けした後、俺は向かいの狛犬によじ登る。
2人共結構身軽な方だと思うけど、ジャケットやらマフラーやらが邪魔だった。
向こう側にいる和也に手を振る。
和也も手を振りかえす。
誰もいない神社に2人の笑い声が響いていた。
それは数分の事で、お手伝いさんが温かいお茶を手にして帰ってきた時には降りていた。
正確には、お手伝いさんの姿がチラリと見えた瞬間、2人共跳び下りていたのだ。

お参りの後、何を願ったのだと訊いてみた。
すると、和也はニッコリと笑ってこう言った。
「智とずぅっと一緒にいられますように、って。」
驚く事…と言っていいだろう。俺と全く同じ願い事だった。
「智はぁ？」
「くくっ…なぁーいしょっ！」
「え？ズルいぞっ。」
俺の頭を小突いた和也の手を握る。
そして、和也の耳に手を添えて、囁いた。

「…全く同じだ。」