オレンジ [気象系] (ページ1)

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～prologue～　　約束ページ1

昔の事。
いつもの様にどこか息の詰まる施設を抜け出して、2人で散歩していた時。
近所の教会で、結婚式が執り行われていた。
白いウェディングドレスに身を包んだ花嫁がとても綺麗で、幸せそうで…羨ましかった。
全てが満ち足りている様に見えたから。
その花嫁の隣に立つ花婿の浮かべる微笑みも、幸せそのもので、素敵だった。
やっぱり、羨ましかった。
それ以来、数組のカップル達の結婚式を外から見ていた。
この教会は、幸せになれる場所なのだという漠然とした思い込み。
そう思って、誰もいない静かな教会で2人で遊んだりしていた。
そうしたら、どこか息の詰まる児童養護施設から逃れられた。
お気に入りは蔦の這う教会裏。
「ずっと一緒にいようね。」
そんな儚い約束をしてみたりして。
小指を絡めて誓って、花嫁がしていたベールの様な物を被ってみたりして。
神様がいるという教会で。
体が弱い弟と、ずっと一緒に…遊んでいられたら。
それが幼い頃の俺の唯一の、そして絶対に叶えたい想いであり願いであり希望だった。

「智、見て。できた。」
花輪を作り終った弟が、ニッコリと笑った。
成長してからも、蔦の這う教会は俺らのお気に入りの場所だ。
「やっぱり、和也は器用だな。」
「智だって器用じゃん。」
そんな事を言い合いながら、手を繋いで…。

「ずっと一緒にいような。」
「勿論。」
もう何度目になるのか解らない程交わした約束――