諦めとその反動 ページ4
あれから何時間経ってどれ程進んだのだろうか。
船で頂戴してきた水と食料で繋いできたが、何処までも果てしなく続く海に大分メンタルがやられてきた。たぶん朝の9時頃ではないだろうか、太陽の位置からするに。
ちょっとまて、
太陽は何処から昇ってきた？
後方からだった。
そして、昨日どちらに沈んだ？
後方だ。
つまり、
昨日は東へ進んでいたのに、いつの間にか西へと進んでいる！！
「な、なんで...。ずっと真っ直ぐに漕いでいたのに。...まさか、眠っている間に...っ！」
ホントに自分の不運さに嫌気がさした。これで、何となくはわかっていた自分の居場所もさっぱりわからなくなってしまった。
本当にこのまま海の上で死んでいくのだろうか、餓死は辛いと聞く。いっそのこと...
縁起でもない自分のネガティブ思考を頭を横に振って振り払う。
大丈夫だ。まだ２日分は食料が残っている。それにこのまま西へ進めばきっと何かしら島があるはずだ。そしたら、海軍の基地に連絡をさせてもらって...。うん、大丈夫！がんばるぞ！
「ビガーチェンジ！」
気合いを入れ直し、能力でオールを大きくして少しでもたくさん水をかけるようにした。
遭難３日目。
この前の事があったので、今までずっと寝ないでオールを漕ぎ続けている。やっぱりグランドラインを手漕ぎ船で進むのは無茶であったと思うしかない。海軍はおろか、海賊船の1隻にも遭遇しなかった。そして、最後のリンゴとパンも食べてしまった。
薄暗くなっていく空を見てため息がこぼれる。体も髪も洗っていないので汗や潮風でベタベタして、とても気持ちが悪い。でも、そんな事以上に水がなくなる方が気がきでない。
ここまでなのだろうか。
オールを握りしめた手を開いてみると、マメがが破れて血が流れていた。疲労もかなり限界に近く、くたくただ。
もう、眠ってしまおう
眠っているうちにお迎えが来た方が楽だろう。
ああ、短い人生だったな。毎日のように姉さん達に怒られるし、ツル中将に凄まれるし、万年下っぱ見習い兵士だったな。
やり残したこといっぱいある。これでも年頃の女だ。誰かと付き合ってみたかったし、結婚もしてみたかった。
恋
目の裏に浮かぶのは一人の顔。死ぬ前にもう一度でも良いから会いたかったな―――
あ、だめだ。
目が閉じていく...
もう、どーにでもなれ...
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作者名：日比野 スズメ | 作成日時：2018年11月25日 17時
