進め前へ ページ3
なぜですか、神様。私今日頑張りましたよね？
「っ…ばかやろー！！！」
誰に言うでもなく、強いて言うならば自分の不運さに叫んだその言葉に「くわっ」と鳴いて応えたのは、頭上を飛んでいくニュースクーだけであった。
もしかしたら自分がいないことに気が付いて戻ってくるのではないかと期待してから約二時間。あっけなくその期待に裏切られた私に更なる不運が降りかかった。
お腹がすいて船内のキッチンへ行き、リンゴとパンを拝借した帰りのことだった。
足元からピチャリと音がしたので不思議に思い見下ろすと、水が張っていた。船の中なのに、だ。サッと血の気が引く。
考えられることは１つだ、この船は沈もうとしている。急いで小舟を探し、海へ下ろした。早くしなければ数時間で沈んでしまうだろう。
さっさとずらかろうと船の縁に足をかけたときだった、船内にいた海賊たちが頭にちらついた。このままこの船が沈めば中にいる彼らは間違いなく海の底へと沈んでいくことだろう。
...私は海軍で、彼らは海賊、敵である。別に彼らがどうなろうと気にすることはない。
...でも、こんな私がいっちょまえに自分なりに掲げている"正義"に背くことはしたくない。
パンとリンゴを小舟の中におき、もう膝下辺りまで水面が届いてしまっている船内へ、力が抜けそうになるのを堪えて向かった。
「よい、しょ。―――これで全部かな。」
取り敢えず見付けられた分は運んだ。
「おし、......”ビガーチェンジ”！」
能力で大きくした自分の刀で床板を切る。これで浮かぶはずだ。この中に能力者がいたら海水でやられてしまうかもしれないが、出きるだけのことはやっただろう。
ぐらぐらと船が傾き、もう時間が無いことを知らせる。そろそろ御暇するとしよう。私も能力者の端くれなので、海水に浸かりながら運んでいたため力が抜けてきた。
小舟にのり、中にあったオールで海水をかく。
これから、どうしようか。
ここは、確かグランドラインの前半の海だ。地図もエターナルポースも無いためどちらに行けば陸があるかわからない。
かなり危険な状況であることに今更ながらに気がついた。
「...とりあえず、進むしかないかな。」
確かツル中将の船は右の海へ進んでいった。そちらに行こう。絶対に追い付ける気はしないが途中で島か軍の船が見えるかもしれない。
いつの間にか沈みかけていた太陽を背にオールを漕いだ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：日比野 スズメ | 作成日時：2018年11月25日 17時
