アンラッキーgirl ページ2
世はまさに大海賊時代。
星のかずほどの海賊達が大海原を進んでいく。
そのなかでも四皇、七武海のような世界に大きな影響を及ぼすほど大きな力を持つ彼らは、その腕っぷしはもちろんのこと、多くのものたちを惹き付けるカリスマ性や人望があるからこそここまでのしあがってきたのだろう。
だが、それ以上にこの海でものを言わせるもの、「それ」を持っていることこそ最大の強みであろう。
それとは、"運"だ。
戦いのなかでは女神が微笑むものが勝者となる。幸運を持つもののみが新世界を渡っていける。
長々と語ってきたが、つまり私が何を言いたいのかと言うと、私と言う人間はとっても、
「...ついてない」
グランドラインの始めのほうで一人海賊船にいる私は絶望的状況で自分の不運を呪った。
先の戦いで私は賞金首の乗る海賊船へ乗り込み、先陣を切って奥へと進んでいった。別に自分が仲間の中で強いからと言うわけでは決してない。むしろ私はいつも後ろのほうで隠れながらやり過ごしている。海賊にびびって前へ出られないなど海軍が聞いて呆れるだろう。
そしてついに上司からお呼びだしがかかり、
「あんた、そんなんじゃいつになっても成長しないじゃないかい。いいかい、次、また今日みたいなみっともない真似したら、海ンなかに蹴り落とすからね。」
と、オシッコチビるんじゃないかってほどの怖い顔でツル中将に言われた。
正直私は海の藻屑となる方がこの人に凄まれるよりマシなのではと思った。
とにかく、今回は背後から言うまでもない視線を感じたので、
もう、ままよ!という具合で飛び出したのだ。
それからは無我夢中で刀を振り回し、泣き叫びながら体を動かした。そして気が付いたら船の最奥にいて、加えて敵は全員のびていた。やれば出来るんじゃない、私。
...なんて思ってたのも束の間、私はようやく異変に気づいた。
周りに敵の気配もなければ、仲間である姉さん達の姿も見えないのだ。
まさか...と最悪の事態を想像して冷や汗が背を伝う。
急いで甲板に出ようとするが、敵船故に構造がわからず、思ったよりも時間を食ってしまった。
やっとのことでたどり着いたものの、辺りにはこの海賊団が倒れているだけである。
そして、右の海に顔を向け、膝から崩れ落ちた。
遥か彼方に浮かぶ白い帆にmarineと書かれた本来自分が戻る船との距離に、自然と涙が頬を伝った。
私は忘れていた。自分が運が無いだけでなく影が薄いということを。
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作者名：日比野 スズメ | 作成日時：2018年11月25日 17時
