【あほの坂田】化けだぬき症候群【うらたぬき】

２１話 ページ24

Aからのキスは甘くて、優しい味がした

「わ〜お、ダイタンやね〜」

さかたの冷やかす様な声にちょっとだけイラっとして目を開けると、俺は人に戻っていた

……これでいいんだろうけど

「キスはやりすぎだろ」

「いいじゃん別に。人に戻れたんだから」

「あ、その事だけど」

「ここからは私が説明します。ご主人様は恥ずかしがって本当の事は言えなくなるでしょうから」

俺と分離したやまだぬきが話を遮りやがった

しかも包み隠さず言う気らしい

あの話は言いたくなかったのに……

「まずは事の大前提から話しましょうか。実は、神達に消されかけたというのは嘘です。本当は取引を持ち掛けられました」

「取引……？」

「その内容はご主人様に言ってもらいましょうか」

俺に振るな俺に
結局言いたくない事言わないといけないし

俺のぬいぐるみってこんなドＳだったか？

「……このまま消えるか、それとも……」

「それとも？なに？」

全てを知りたがっているAが催促する

これもやまだぬきの予想通りかと思うと腹立たしい

「……結婚するか」

「……ハイ？」

俺だってそうなった、そりゃそうなる

さかたとセンラがヒューヒューとはやし立ててくる
お前らいつからそんな仲良しになったんだか

「近年この日本は少子化問題で苦労させられています。神達が頭を抱えるほどに」

確信犯のやまだぬきが説明を再開した

「だから、１組でも夫婦を作りたい。そこで目をつけたのがあなた達です。普通のカップルよりはるかに扱いやすかった」

「付喪神の存在を受け止めたからな」

「え、でも私達学生なのに結婚とか……」

「神様舐めないでください」

謎にキレるやまだぬき

「で、流石に無理矢理結婚させるのはどうなのかと思い、A様が本当にご主人様を愛しているか確認する為に一芝居打ったのです」

「俺らはそのお手伝いしてたって訳や」

「学校休んでまであんな気色悪い事したんやで？」

「あ、ありがとう……」と苦笑いで返すA
「むしろありがとうございます！」と聞こえた気がしないでもないが多分空耳だろう

「で、どうするんです？結婚の事」

返事が聞きたくなくて、言いたくなかった
実は片想いしてるだけなんじゃないかって、ずっと思ってたから
結婚まで考えるなんて、高校生が考える事じゃないから

このまま時が止まればいいのに

フラれたく、ない

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