強気な姐さん

10話 ページ17

「アガっ、ゴフッ」


「ﾋｯも、もうやめ」


路地裏にはナニカを殴る音と怯える声が響いていた。


「このまま帰らせねぇっつったべなわーさ絡んだごど後悔すろ」


周りを見渡し、そろそろ帰るか、と、踵を返そうとした時、



「チッ、このままで終わらせるわけねぇだろッ！」


「ッ！」


背後にまだ残党が居たようで、鉄パイプで殴りかかって来た


「(やばぇ、油断すちゃー)」


ガッ！


「·····？」



急な展開に目を瞑るが一向と痛みは来ない。フルスイングされた鉄パイプはエペルに当たることは無かった。



『ちょっと、アンタ達。1人に寄ってたかって、



恥ずかしくないのかしら？』




そこからはあっという間で、いつの間にか立ち上がっていたヤツらもまとめて絞めあげていた。



『ふぅ、



アンタ、大丈夫？アタシはA。アンタは？』



A、彼は、そのタッパと声から男だと分かるが、本当に女の人よりもずっとずっと綺麗な顔をした人だった。



「え、あ、わ、わっきゃエペル」



『エペル、そう、エペルって言うのね、アンタ唇切れてるじゃない。アタシに着いてきなさい。

折角綺麗な顔してんだから、そんな事してんじゃないわよ。』



「ッ」



何故だか無性に苛立った。


こいつも自分の事を女の様だ、と言っている様に思えたからだろうか。



「···おめも、おめもそうやってわーば侮辱すんのが！？

舐めでんじゃねぇ！！」



『！』



エペルはそう言い、Aに掴まれていた手を振り払い、キッと、睨みつける。



「おめ、わーど喧嘩すろ。おめが勝ったっきゃわーがおめに従う。でもわー勝ったっきゃこぃがらわーさ従え！」



『！


はぁ、急に何を言い出すかと思えば、



いいわ。その喧嘩、買ってあげる。』




Aはエペルの急な喧嘩の申し込みにも二つ返事で返した。







結果は──────────











「はあっ、はあ、···」




『これに懲りたらもうこんな事すんじゃないわよ。』





Aの圧勝だった。


敗因は、まぁ、力の差、と片付けた方が早いが、一応説明をしておこう。

Aは自分のことをよく知っている。どうすればよく力が出るか、どんな動きをすれば体力が削られずに済むか、


エペルは力任せに相手を殴り付けるだけで、後のことは考えずに序盤で体力を使い果たしてしまった。



まぁ、そんなこんなで今の関係性になったわけなのだ。

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