29, 用意周到 ページ30
「…本当に誰もいないわ」
「いないならいないで良いじゃねぇか」
ナワバリを抜け、カタクリ兄様の用意した船に乗り込んで数時間。
無駄に広い作りのため、一通り見て回るのは思いの外時間がかかってしまった。
見聞色の覇気でざっと探った感じでも人の気配は無かったものの、念には念を入れて見て回っていたのだ。一通り見てもやはり誰もいなかった。
「さて、じゃあビブルカードを辿ってローと合流しようぜ」
「そうね…また1人で放浪してないといいけど…」
「…そこは、まあ…何とかなるだろ！」
「投げやり」
「うるせぇ」
軽口を言い合いながら懐からビブルカードを取り出し手のひらに乗せると、すすすっと指先に向かって紙が動く。
「とりあえずはまっすぐか」
「ええ。でも2人だけだもの、そんなゆっくりはしてられないわよ」
「んなこたぁわかってるよ」
「…また航海術が役立つなんてね」
「だな。普段はベポがやってくれてるからな」
「…感覚が鈍って無ければいいんだけど…」
「…おれは何とも言えん」
若干の不安を滲ませながらも、新世界を逆行するように針路を取る。
しばらくは操舵の近くで過ごせるように椅子や毛布、日傘やお菓子に至るまで一通りを揃える。
「…にしてもカタクリのやつ、随分と用意周到だな」
「そうね…なんだかんだ、あの人も根は優しいのよね」
「……まあな…」
不本意そうなハルの頭を撫でながら、ビブルカードで針路を確認する。
「それじゃあ、愛しの船長の元へ行きましょうか」
1度帽子を被り直してから、着ていた上着を新世界の海へ投げた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 104人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ONEPIECE」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：和泉 | 作成日時：2019年9月9日 22時
