27, "兄様" ページ28
「ありがとう、プリン、ラビヤン…ここまででいいわ」
そう言って、ラビヤンから降りる。
ここはもう海岸近く、先回りをした兄弟達が来ていてもおかしくはない。見つからないうちにとお礼を告げる。
「…姉さん」
「いい？プリン、ラビヤン。何か聞かれたら"私の能力で無理矢理ここまで運ばされた"と言うのよ」
「姉さん！私…!!」
「いいわね？それじゃあ、"おやすみ"」
私がそう言えば、プリンとラビヤンはすっと意識を失った。
それを確認し、私は早足に海岸へ向かう。
そして、やっとのことで海岸に着くと…
「…カタクリ兄様…!!」
「……おいおい…」
海岸で優雅に座るカタクリ兄様がそこにいた。
ハルもすぐに逃げることができる体制に入る。
しかし、兄様が攻撃をしてくる様子は無い。
「…12年前だったか、あの時もお前を逃がしたな」
「……ええ、感謝してます…」
「ママはお前の能力を欲しがっているが、おれはそこまで重要性も脅威も感じない」
そう言いながら、兄様は立ち上がる。
私もハルもより一層警戒を強めるが、カタクリ兄様は悠々と私達の横を通り過ぎた。
「ナワバリを抜けた先に無人の船を1隻用意しておいた……お前はこう言う"ありがとうございます。カタクリ兄様"」
「……ありがとうございます。カタクリ兄様」
「ああ…武運をな…」
「…っ！」
その言葉の直後に上に引っ張られる。
上を見れば、ハルが私を掴んでいた。
「海に落ちたら終わりだ。飛ばして行くぜ」
「…ええ、落とさないでね」
「誰に言ってんだ！」
ナワバリの外を目指して、私達の表情はきっと晴れやかだろう。
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作者名：和泉 | 作成日時：2019年9月9日 22時
