26, 命令 ページ27
「おい！"誘惑の森"はどうする!?飛ぶか!?」
「…飛ぶのはまずいわ…まあ、任せて」
「任せてって…もう後ろから来てんぞ！」
ハルの言葉に振り返れば、兄弟達を筆頭にチェス兵も来ている。
それでも、何か"攻撃的なこと"をしたわけでは無いせいか、追手は少ない。
追手が少ないとは言え、強者揃い。油断をしてはいけないと足を緩めることはしない。
そしてそのまま誘惑の森へ入る。
「…命令する、"海岸への道を開いて"」
すると、行く手を阻もうとしていた誘惑の森が道を開ける。
−自分達の意志とは関係無く
「……ママが"その能力"を欲する理由がよくわかるな…」
「…欲しくて手に入れたわけじゃないわ」
「そんなことわかってるが、この時ばかりはその能力に感謝だな」
道が開かれた誘惑の森を走っていく。
通って来た道はもうほとんど能力の効果が切れて、元の形を取り戻そうとしている。
完全に元の形を取り戻す前に海岸にたどり着く為に急いでいると…
「A姉さん！」
後ろから名前を呼ばれて、足を止めることはせずに振り返る。
「プリン…!?あなたどうしてここに…」
「私！姉さんに言いたいことがあって…!!」
ハルは無言のまま、プリンに警戒を表している。
それを見ながらもプリンは私に強い意志を持った目を向ける。
「姉さん…！私のこと、助けてくれてありがとう…!!」
「……プリン…」
「…"あの頃"は、私なんかより姉さんの方が辛いってわかってたのに、甘えてごめんなさい…！でも、私は姉さんに救われたの…本当にありがとう…!!」
その言葉を聞いて私は立ち止まってプリンに向き直る。
「…命令する、"私を連れて誘惑の森を抜けて"」
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作者名：和泉 | 作成日時：2019年9月9日 22時
