13, それは、理想の… ページ14
「さあ！話してもらおうか！！」
「……そんな大したことじゃないですよ…？」
予想通りというかなんというか…出航早々、船長を含めて船員全員が食堂へ集まっていた。
目的は1つ、私の話を聞くためだ。
諦めて、1度息を吐いてから話し出す。
「…言った通りです。私は半分人間ではありません」
「それは聞いた！」
「黙って聞いてろお前ら！」
話が遮られたのが気に食わないらしいハルが机をてしてしと叩いている。
「…私は"人間"と"吸血鬼"のハーフです。もう吸血鬼の一族は恐らく私しか残ってないでしょうけど…」
しんとした空気を感じながらも続けていく。
「…私のファミリーネームである"シャーロット"は、"四皇"の一角、"ビッグ・マム海賊団"船長、シャーロット・リンリンとの繋がりを表します」
そこで殆どを察したであろう船員達がゴクリを喉を鳴らしたのがわかった。
「改めて名乗らせていただきます。シャーロット家27女、シャーロット・Aと申します。ママの思い描く"夢の国"のため、吸血鬼と人間の間に産まれました」
改めてどうぞよろしくお願い致します、そう頭を下げる。
顔を上げれば、皆が皆、驚きで目を見開いている。
「…じゃあ、お前…"あの"ビッグ・マムの娘なのかよ…」
「そうですね」
数秒の沈黙の後、すげぇすげぇと皆が騒ぎ出した。
「……思ってた反応と違う…」
「じゃあ、ハルはなんなんだ？」
「おう！おれはな！Aの"使い魔"だ！」
やっと船員の1人がハルに興味を向けたことにより、ハルは嬉しそうに尻尾を立てている。
「吸血鬼ってのはな、自分の使い魔を持てるんだよ。おれはAと"契約"して人間の言葉も喋れるようになったんだ！」
得意気に、満足気に言うハルに笑みがこぼれる。
船員達も明るい顔でハルの言うことを聞いている。
「お前が心配する必要は無かっただろ？」
「…ええ、船長の言った通りでしたね」
暖かな場所に、不意に浮かんだ涙を、気付かれないようにそっと拭った。
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作者名：和泉 | 作成日時：2019年9月9日 22時
