123 ページ3
「そういやあんた、あんとき個性使ってたんか」
自主練中爆豪が休憩するために、私の側に置いてあった水を飲んでそう言った。
「あんときって…？」
「昨日のヒーロー名考案のときに決まってんだろーが！確かに廊下にいたあんたの姿…俺しか見えてなかった！」
ああ、『雲隠れ』か。
「…個性だよ。邪魔したら悪いと思ったからね、姿を消した」
「俺には見えてたのにか？」
「爆豪以外から見えないようにしたんだ」
「…意味わかんねぇ」
これ以上聞いても意味がないと思ったのか、水を置いて再び自主練へ戻る爆豪。その背中に「もう少し左腕の力を入れてバランスとったほうがいいぞ」とアドバイスをすれば「わかった」なんて言って爆破を始めた。
自主練が終わり、着替えて帰ろうとした俺の前に現れたのは毎日見ている担任だった。相変わらず草臥れた格好をしているが、その目は普段より鋭く感じた。
「今帰りか。気をつけて帰れよ」
「…うす」
気づかないフリが一番良い。会釈して相澤先生の横を通りすぎようとしたとき、「なあ爆豪」と低い声で止められた。
「なんすか」
「お前、橘先生に補習してもらっているだろ。それは別に構わんが今あの人は怪我を…」
「怪我治るまでは俺の自主練を見てもらうだけにしてる。それなら問題ねぇだろ、先生」
「…なら橘先生じゃなくても俺が」
「普段あの人に見てもらってるからそのほうが話が合っていいだろ」
「…」
「ケッ…何が別に構わない、だよ。すげぇ気にしてるじゃねえか」
「別に気にして」
「分かりやすすぎるんだよ、先生は」
他のやつらはどうかしらねぇが、俺はすぐ気がついた。まあデクみてぇなクソオタクならもう気づいてるかもしんねぇな。
「俺に嫉妬してんだろ」
「…何のことだ」
「相澤先生な…橘先生といるときは顔が緩んでるし、話す時は嬉しそうでよ。橘先生のいる授業のときはいつもより気合いが入っているんだよ」
「…」
「そこまでわかりゃ気づくだろ。好きなんだろあの人のこと」
「もうすぐ最終下校時間だ。早よ帰れ」
止めたのは先生だろうが。言い返すのも面倒で、黙って横を通りすぎる。
「…憧れだけならやめておけ。一生消えない傷を残すだけだ」
後ろからかけられた忠告に、俺はふと橘先生の眼帯を思い出していた。
『なあ、聞いていいのかわかんねぇけど…あんたのその左目の眼帯…』
『あ、これ？別に気にしなくて大丈夫だよ、ありがとう。ちょっと昔の傷を隠しているだけ』
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 249人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ユキヒメ - めっちゃ面白いです！相澤先生の可愛さとカッコよさどちらも出ていてお気に入りです！更新楽しみに待ってます！ (2021年7月27日 15時) (
レス) id: 68ce7e55eb (このIDを非表示/違反報告)
ユウ - なんどもすみません！！更新待ってました！！この続きがめちゃめちゃ気になります！もう本当にこの小説面白くて大好きです！続き楽しみにしてます！ (2018年8月10日 23時) (レス) id: 74ed180ca2 (このIDを非表示/違反報告)
夜飴(プロフ) - ユウさん» ありがとうございます！そう言っていただけるととても嬉しいです。更新頑張りますので、これからもよろしくお願いします。 (2018年8月10日 1時) (レス) id: 9ef0a88e71 (このIDを非表示/違反報告)
ユウ - はじめましてこんにちは！この作品が大好きで最近はいつも拝見させていただいてます！この作品ほんとーに大好きです！これからも楽しみにしてます！頑張ってください！ (2018年7月9日 1時) (レス) id: 74ed180ca2 (このIDを非表示/違反報告)
夜飴(プロフ) - 船長 さん» ありがとうございます！更新頑張っていきますので、これからもよろしくお願いします。 (2018年7月8日 10時) (レス) id: 9ef0a88e71 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：夜飴 | 作成日時：2018年6月9日 13時
