第91話 夫の正体 ページ44
炭治郎視点
先頭車両の屋根の上で鬼と向かい合い、刀を鬼へ向ける。
「……人の心の中に土足で踏み入るな」
人の心につけ込むこの鬼は許せない。
「うふふ、普通はそうだよね……。やっぱりAは特別だったなぁ」
俺とは対照的に、鬼は嬉しそうな笑顔を浮かべていた。A……? 汽車に乗る前に聞いた名前にはっとする。
「お前……今、Aさんって言ったか?」
俺の言葉に鬼が少し驚いた表情を浮かべた後、口元を歪に引き結んだ。
「言ったよ、お前も知ってるの? Aはね、俺が初めて吸収した人間なんだよ」
吸収とは何だ……? 考える俺の目の前で鬼が胸元から髪飾りを取り出した。数ヶ月前に会った沼の鬼の悪趣味が脳裏をよぎる。だとすると、Aさんはもう……。
夕焼けの空のような色の髪飾りには見覚えがあった。最初は思い出せなかったが、鬼の匂いに混じって僅かに流れてきた匂いにある記憶が蘇る。
数ヶ月前、十二鬼月が複数現れた町に行った時に会った女の人。あの時、鬼の居場所を知っている様子だったけれど、教えて貰えなかった。
少し離れた所で化け物が出たと騒ぎがあって向かった。こんな事言うのは申し訳ないけど、酔っ払った人が暴れていただけで、化け物……鬼はいなかった。
戻ってきた時にはあの人はいなくなってたし、追いかけようにも雨で匂いが消されてわからなくなってしまった。あの人がきっとAさんだったのだろう。
信じられないがAさんからは鬼を守ろうとする匂いがした。彼女も、汽車の中で会った4人のようにつけ込まれていたのだろうか?
そういえば、さっきの少年はAさんには夫もいたと言っていた。彼はどうなったのだろう?
「お前……Aさんの旦那さんも殺したのか? Aさんの弟がどんな想いで待っているかわかっているのかっ?!」
この鬼に対する憎悪が高まる。怒りで身体が震える。思い切り睨みつけたが、鬼は嬉しそうに笑っただけだった。
「……Aの弟も知ってるんだ。あと、旦那さんの事は心配しなくて良いよ。だって、Aの夫は俺だから」
「……は?」
朗らかに驚きの言葉を口にする鬼に唖然とする。言っている意味がよくわからない。Aさんの旦那さんはこの鬼で、Aさんはこいつが鬼だと知っていて側にいた……?
「うふふ、良いね、その表情」
困惑する俺を見て、鬼は口元に手をやりながら愉快気に笑い声を上げた。
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ぶるうべりぃ♪(プロフ) - 黒脛巾さん» 実はきゅんきゅんをイメージして書いていたので、そのように仰って頂けてとても嬉しいです!ありがとうございます! (2021年1月24日 16時) (レス) id: 69ebf7d565 (このIDを非表示/違反報告)
黒脛巾(プロフ) - めっちゃきゅんきゅんします・・・!更新応援しております! (2021年1月24日 1時) (レス) id: d7d533f63c (このIDを非表示/違反報告)
ぶるうべりぃ♪(プロフ) - 包帯無駄遣い装置さん» 本当は夢主視点にしようとしたのですが、怪我しているのに冷静に実況してたらおかしいなって思いまして笑。嬉しいコメントありがとうございました! (2021年1月14日 19時) (レス) id: 69ebf7d565 (このIDを非表示/違反報告)
包帯無駄遣い装置(プロフ) - ぶるうべりぃ♪さん» いや魘夢視点なんて素敵すぎじゃないですか (2021年1月14日 19時) (レス) id: 206c89cdd5 (このIDを非表示/違反報告)
ぶるうべりぃ♪(プロフ) - 包帯無駄遣い装置さん» 包帯無駄遣い装置さん!ありがとうございます!魘夢様が素敵と仰って頂けて、書いている私としてはもう本当に幸せです!応援ありがとうございます! (2021年1月14日 18時) (レス) id: 69ebf7d565 (このIDを非表示/違反報告)
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