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第71話 ふと考える ページ24

皐月───。少しずつ夏が近づく気配がするこの季節。引き戸の隙間から入ってくる涼しげな風が心地よい。

ちゃぶ台に肘を突き5月5日と書かれた日めくりカレンダーを何気なく眺め、ぽつりと呟く。

「もう5月ですね……」

昨年、家でも小さな鯉のぼりをあげ、お母さんと柏餅を作ってみんなで食べた記憶が懐かしい。

そんな私を横目に魘夢様も「子どもの日か……」と小さく呟いた。彼も昔の事を思い出しているのだろうか?

魘夢様も昔は人間の男の子だったのだし、端午の節句のお祝いもしたのだろう。きっと、可愛らしい男の子だったのだろうな……、そんな事を考えているとむふふ、と笑ってしまいそうになり、両手で頬を押さえる。

「Aは俺に会った事を後悔した事はないの?」

「……え?」

唐突な質問に思考が停止する。恥ずかしいけれど、私が魘夢様の事を好きだという事を魘夢様はよく知っているはずだ。それなのに、どうしてそんな事を仰るのだろう。

「私はありませんよ。魘夢様は……その……私に会わなきゃ良かったと……思っているのですか……?」

不安で言葉が途切れ途切れになる。知り合って5ヶ月。おこがましいかもしれないけれど、私は距離が縮まったように感じていて嬉しかった。魘夢様は違ったのかな……。

私の質問が予想外だったのか、魘夢様の唇からえ?、という少し間の抜けた声が漏れた。

「俺? 俺もないよ。どうして?」

彼からの質問に私は「どうしてって……」と思わず戸惑う。しばらく考える私を見て、「あぁ、俺が聞いたからだよね」と納得したように1人頷き、言葉を続けた。

「……鬼はあの方が血を分ける事でしか増えられないけど、人間は違うでしょう。生物として、子孫を残したいとは思わないの?」

なんて事なさげに、結構大事な事を魘夢様が聞く。その表情からは悪意とかは一切なく、ただ素朴な疑問を口にしている、という事が感じ取れた。

「……それは……難しい質問ですね」

生き物なら家族を持ちたいと思うのは当然なのかもしれない。改めて難しい質問だと思う。

私だって小さい頃は、大人になると新しい家族ができて幸せになる事は当たり前だと思っていたし、そんな生活に憧れていた。

でも、人と距離を縮めるのさえ難しい私には、いつからかそんな姿が上手く想像できなくなっていた。今だって同じ。むしろ、反対の方へ向かっている気さえしているのだ。

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ぶるうべりぃ♪(プロフ) - 黒脛巾さん» 実はきゅんきゅんをイメージして書いていたので、そのように仰って頂けてとても嬉しいです!ありがとうございます! (2021年1月24日 16時) (レス) id: 69ebf7d565 (このIDを非表示/違反報告)
黒脛巾(プロフ) - めっちゃきゅんきゅんします・・・!更新応援しております! (2021年1月24日 1時) (レス) id: d7d533f63c (このIDを非表示/違反報告)
ぶるうべりぃ♪(プロフ) - 包帯無駄遣い装置さん» 本当は夢主視点にしようとしたのですが、怪我しているのに冷静に実況してたらおかしいなって思いまして笑。嬉しいコメントありがとうございました! (2021年1月14日 19時) (レス) id: 69ebf7d565 (このIDを非表示/違反報告)
包帯無駄遣い装置(プロフ) - ぶるうべりぃ♪さん» いや魘夢視点なんて素敵すぎじゃないですか (2021年1月14日 19時) (レス) id: 206c89cdd5 (このIDを非表示/違反報告)
ぶるうべりぃ♪(プロフ) - 包帯無駄遣い装置さん» 包帯無駄遣い装置さん!ありがとうございます!魘夢様が素敵と仰って頂けて、書いている私としてはもう本当に幸せです!応援ありがとうございます! (2021年1月14日 18時) (レス) id: 69ebf7d565 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ぶるうべりぃ♪ | 作者ホームページ:http:/  
作成日時:2021年1月13日 18時

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