第62話 迷想 ページ15
「じゃあ、貴女も……。このままではそいつに食べられてしまってもおかしくない……。貴女からは、血の匂いもします。その鬼にやられたんですよね? 俺を案内してください……。俺が頸を切ります」
その声色からは、悲しみと怒り、正義感が溢れ出しているように感じた。ううん、それだけじゃない。
この子からは底抜けの優しさが感じられる。荒んだ心も癒されてしまうような……そんな優しさ。
どうしてこんな会って間もない私にそんな優しい目ができるの? 昨日会った鬼狩りもそうだった。
でも───私は魘夢様が死んでしまうのは嫌。だけど魘夢様が生きるという事は、それはつまりたくさんの人が食べられて死んでしまうという事。それは良くない。
それなら魘夢様は生きていてはいけないの? その言葉にぞっとした。昔、言われた言葉が蘇る───。
『Aちゃんは、いてもいなくてもあまり変わんないよ。あ、やっぱり”汚物”はいるだけで迷惑?』
なんて事なく発せられた言葉。言われた方はどれ程傷付いているのか、全く知らない楽しそうな笑顔───。
鬼は人を食べるから、生きていては駄目なのかな……? 嫌だな、そんな事思いたくない。
人間だって、動物や魚のお肉を食べる。でも、鬼は元々人間だった訳で……。
それに、もし弟やお母さん、お父さんが鬼に襲われるような事があったら、同じ事を言える自信はない。
食べるためなら、動物や魚は殺して良いけど人間は駄目……? なんか嫌だな。嫌だばっかりね、私。
考えれば考える程、わからなくなってしまう。人の目線に立ったら、勿論ここで魘夢様の居場所を教えるのが正しいのだろう。
でも、魘夢様が勝つか否かは置いといて、一番辛い時に救ってくれた恩人である彼を───大好きな彼を───裏切る事だって、私には正しくないし、絶対したくない。
「……あの、大丈夫ですか? 顔が真っ青に……。もしかして、脅されているのですか?」
炭治郎君が心配そうに私を覗き込む。背中をそっとさする手がじんわりと温かくて力強い。本当に年下なのかと疑いたくなってしまう程の包容力だ。
だけど───。
「……ごめんなさい。鬼が人を食べる事は知っているし、鬼を倒す事でたくさんの人が救われる事もわかっています……。でも……私はあの人……あの方の居場所を教える事は……」
そこまで言って口を噤む。「できません」と、はっきり言うのはどうしても憚られた。
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ぶるうべりぃ♪(プロフ) - 黒脛巾さん» 実はきゅんきゅんをイメージして書いていたので、そのように仰って頂けてとても嬉しいです!ありがとうございます! (2021年1月24日 16時) (レス) id: 69ebf7d565 (このIDを非表示/違反報告)
黒脛巾(プロフ) - めっちゃきゅんきゅんします・・・!更新応援しております! (2021年1月24日 1時) (レス) id: d7d533f63c (このIDを非表示/違反報告)
ぶるうべりぃ♪(プロフ) - 包帯無駄遣い装置さん» 本当は夢主視点にしようとしたのですが、怪我しているのに冷静に実況してたらおかしいなって思いまして笑。嬉しいコメントありがとうございました! (2021年1月14日 19時) (レス) id: 69ebf7d565 (このIDを非表示/違反報告)
包帯無駄遣い装置(プロフ) - ぶるうべりぃ♪さん» いや魘夢視点なんて素敵すぎじゃないですか (2021年1月14日 19時) (レス) id: 206c89cdd5 (このIDを非表示/違反報告)
ぶるうべりぃ♪(プロフ) - 包帯無駄遣い装置さん» 包帯無駄遣い装置さん!ありがとうございます!魘夢様が素敵と仰って頂けて、書いている私としてはもう本当に幸せです!応援ありがとうございます! (2021年1月14日 18時) (レス) id: 69ebf7d565 (このIDを非表示/違反報告)
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