第45話 逃げちゃえ ページ47
「人間はさ、逃げるのは悪い事みたいに言うけど俺はそうは思わないよ。人間の心は硝子細工のように脆くて弱い。だから、逃げる時は逃げないと駄目になっちゃうと思わない?」
首をこてんと傾けながら、魘夢が柔らかく歌うように仰る。
嫌な事から目を逸らす事はきっと、正しくはないのだろう。だけど、時々その正しさに押しつぶされそうになる時があった。
どんなに苦しくても、前へ進むべき。傷ついても立ち上がるべき。それは正しい。すごく正しい。
なのに、その正しさの刃が胸に刺さる。こんな私は間違ってる。それがわかっているからこそ余計に辛い。
そんな風によく思っていたせいか、魘夢様の言葉に優しく撫でられたような気がした。弱さを受け入れられるとこんなにも人は駄目になってしまうのだと感じる。
ああ、やっぱりこの方の事好きだな、という思いも同時に感じた。
人間にとって鬼は敵。好きになるなんて、正しくないのだろうし、この鬼狩りからしたら馬鹿にされているように感じるんだろうな。
だけど、じゃあ魘夢様を嫌いになれ、と言われたら私はとてもできない。
「……そう、ですね」
ぎこちなく頷いた私に魘夢様が返事を帰すより先に、どさりと何かが倒れる音がした。嫌な予感がしてそちらを向く───。
視界に入ったのは、倒れている鬼狩りだった。周囲には大量の血溜まりができていて、医療の知識がなくても、既に取り返しのつかない状況である事は理解できた。
腕が震えていたけれど、それも数秒で終わった。がくり、と彼の腕から力が抜け刀が地面に落ちる音が静かな空間に響く。私にはそれが命が落ちてしまった音のように聞こえた。
「……あ、ああ」
魘夢様の言葉でどこかほわほわした気持ちになっていたけれど、一気に現実へと引き戻された気がする。ショックで腰の力が抜け、思わず倒れ込んだ私を童磨様が振り返った。
「死んでしまったねぇ。大丈夫かい? Aちゃん」
先程と同じ方のはずなのに、今は少し……とても怖く感じてしまう。月明かりに照らされて、彼の目が怪しく不気味に光ったように感じた。
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包帯無駄遣い装置(プロフ) - ぶるうべりぃ♪さん» ですね! (2021年1月10日 21時) (レス) id: 206c89cdd5 (このIDを非表示/違反報告)
ぶるうべりぃ♪(プロフ) - 包帯無駄遣い装置さん» そうなんですよね!ムキムキ過ぎないところがまた素敵なんですよね!(続きはこみゅーの方にてお話しましょう!) (2021年1月10日 21時) (レス) id: 69ebf7d565 (このIDを非表示/違反報告)
包帯無駄遣い装置(プロフ) - ぶるうべりぃ♪さん» 特に映画の上半身裸になっているとこ((((悪夢見せてあげようか?by魘夢 (2021年1月10日 21時) (レス) id: 206c89cdd5 (このIDを非表示/違反報告)
ぶるうべりぃ♪(プロフ) - 包帯無駄遣い装置さん» そう仰っていただけて、嬉しいです!映画の魘夢様も、原作の魘夢様もすごく可愛いですよね!コメントありがとうございました! (2021年1月10日 12時) (レス) id: 69ebf7d565 (このIDを非表示/違反報告)
包帯無駄遣い装置(プロフ) - やだ魘夢可愛いすぎ (2021年1月10日 2時) (レス) id: 206c89cdd5 (このIDを非表示/違反報告)
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