第31話 会いたくない人 肆 ページ33
「……そんな、なんでっ。まだ昔の事、怒っているの? なら、謝るよっ、ごめんねっ、あの時のあたしはどうかしてたよ! 新しい友達ができて嬉しくて楽しくて……。Aがひな子達に酷いこと言われてる時私だって辛かったんだよ?!」
文ちゃんが喚くように言いながら、私の腕を強く引っ張って必死に訴えてくる。気持ちは伝わってくるけれど、首を縦に振る気にはどうしてもなれない。
「文ちゃん。私はね、貴女のこと怒っている訳ではないの。文ちゃんが辛いと思ってる事、私も知ってたよ」
一生懸命話す彼女に私はそっと語りかけた。その瞳に期待の色が浮かぶ。
「……なら、A」
和解できると信じている瞳。そんな瞳に応えるように私は微笑みかける。
「ただ……、ただね。悲しかった。傷ついた。もう昔みたいに仲良くすることはできない……」
俯き加減で話す私に文ちゃんは非難するような視線を送ってきた。
「Aちゃん、どうかしてるよ!」
文ちゃんが私の腕を突き放し、目に涙を浮かべながら叫ぶ。『どうかしてる』その言葉は否定できない。
だけどその言葉を聞いた魘夢様はくるりと、ひな子ちゃんの去った方から文ちゃんへと視線を移し会話に混ざった。嘲るような笑顔は無くなっているが、どこか不安を掻き立てられる笑顔を浮かべている。
「Aは確かに普通じゃないよ。だけどね、普通じゃなくしたのはお前達だと俺は思うな」
魘夢様の仰る事は間違いではない気がした。何でもかんでも人のせいにするのは良くないとはわかっているが、あの事がなかったら今の私は確かになかったと思う。
そういえば私も最初は魘夢様にお前と呼ばれていたけど、気付いたら君になっていたな、なんてくだらない優越感に内心浸りながらも、もう何も話す気はなさそうな文ちゃんを見守った。
彼の視線が自分に移った事で文ちゃんは怯むように息を呑んだ。じゃり……、と後ろへあとざすり、怯えたように魘夢様を見上げる。
「もう、知らないっ」
言葉とともにだっと駆け出し、少しつんのめりながらひな子ちゃんの後を追って走っていく。その後ろ姿を私はしばらくぼんやりと見ていた。
もう、彼女に会う事はないだろう。そう思うと名残惜しくもある。
「やあやあ、こんな素晴らしい夜に争う声が聞こえるから何事かと思って来てみれば、見知った顔がいるじゃないか!」
突然、視界が何者かの手によって覆われた。
作者から
最後の一言、誰だと思います…?
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包帯無駄遣い装置(プロフ) - ぶるうべりぃ♪さん» ですね! (2021年1月10日 21時) (レス) id: 206c89cdd5 (このIDを非表示/違反報告)
ぶるうべりぃ♪(プロフ) - 包帯無駄遣い装置さん» そうなんですよね!ムキムキ過ぎないところがまた素敵なんですよね!(続きはこみゅーの方にてお話しましょう!) (2021年1月10日 21時) (レス) id: 69ebf7d565 (このIDを非表示/違反報告)
包帯無駄遣い装置(プロフ) - ぶるうべりぃ♪さん» 特に映画の上半身裸になっているとこ((((悪夢見せてあげようか?by魘夢 (2021年1月10日 21時) (レス) id: 206c89cdd5 (このIDを非表示/違反報告)
ぶるうべりぃ♪(プロフ) - 包帯無駄遣い装置さん» そう仰っていただけて、嬉しいです!映画の魘夢様も、原作の魘夢様もすごく可愛いですよね!コメントありがとうございました! (2021年1月10日 12時) (レス) id: 69ebf7d565 (このIDを非表示/違反報告)
包帯無駄遣い装置(プロフ) - やだ魘夢可愛いすぎ (2021年1月10日 2時) (レス) id: 206c89cdd5 (このIDを非表示/違反報告)
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