第30話 会いたくない人 参 ページ32
「……どこって……うーん、全部? 性格が醜いからかなぁ。顔に醜さが表れてるよ」
当然の如く仰る魘夢様に血の気が引く。案の定言われた本人は怒りのあまり血管を浮き出たせながら、憎々しげに魘夢様を睨みつけている。
ひな子ちゃんからの嫌悪が心地よいのだろう。魘夢様は物凄く嬉しそうに眉をへの字にして『それに』と付け加えた。
「Aは醜女じゃない。俺はね、Aの身体がなくなっても頭はずっとずっと取っておきたいくらい可愛いと思っているんだよ」
うっとりするような笑顔で魘夢様は仰る。その視線は定まっておらず、何も知らない人からしたら、夢や幸せを語る人にも見えるだろう。
明らかに人の理解を超えた反応に文ちゃんとひな子ちゃんはたじろいでいる。文ちゃんに至っては少し怯えているみたい。
そして、本当なのか嘘なのかわからないが彼の言葉に嬉しいと感じてしまっている私がいる。赤くなった頬を見られるのが恥ずかしくて思わず下を向いた。
「……ふざけないで、頭おかしいんじゃないの?! 行こう、文っ」
魘夢様の言葉で少し冷静に戻ったのだろう。先程まで顔を真っ赤にしていたのに、今は元の色に戻りかけている。魘夢様を避けるように、ひな子ちゃんが先に歩き出す。
そんな彼女を魘夢様は嘲るような表情を浮かべながら見ていた。その様子を見つつ、私はまだ目の前に立っている文ちゃんへと視線を移す。
「あの、ひな子ちゃん行っちゃったよ。早く追いかけないと」
私の言葉に文ちゃんははっとしたように肩を震わせた。ひな子ちゃんが行った方を一瞥してから、私の着物の袖を小さく引っ張る。
「……A、この人なんかおかしいよ、怖いよ。Aも一緒に行こう。この人と一緒にいてもAは幸せになれない」
不安そうに見つめてくる視線が久しぶりだった。だけど、彼女の言う事には賛同できない。
「……文ちゃんが怖がってるのはわかったし、私を心配してくれてるのもわかった。ありがとう」
ここで一度言葉を切る。頭の中を一度整理したかった。
「でも……でもね、私にとって怖いのはこの方じゃない。貴女達なの……。私は貴女達といると辛くなると思う……ごめんね」
言葉と共に思わず俯いてしまう。人にこんな気持ちを伝えた事はなくて慣れない。
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包帯無駄遣い装置(プロフ) - ぶるうべりぃ♪さん» ですね! (2021年1月10日 21時) (レス) id: 206c89cdd5 (このIDを非表示/違反報告)
ぶるうべりぃ♪(プロフ) - 包帯無駄遣い装置さん» そうなんですよね!ムキムキ過ぎないところがまた素敵なんですよね!(続きはこみゅーの方にてお話しましょう!) (2021年1月10日 21時) (レス) id: 69ebf7d565 (このIDを非表示/違反報告)
包帯無駄遣い装置(プロフ) - ぶるうべりぃ♪さん» 特に映画の上半身裸になっているとこ((((悪夢見せてあげようか?by魘夢 (2021年1月10日 21時) (レス) id: 206c89cdd5 (このIDを非表示/違反報告)
ぶるうべりぃ♪(プロフ) - 包帯無駄遣い装置さん» そう仰っていただけて、嬉しいです!映画の魘夢様も、原作の魘夢様もすごく可愛いですよね!コメントありがとうございました! (2021年1月10日 12時) (レス) id: 69ebf7d565 (このIDを非表示/違反報告)
包帯無駄遣い装置(プロフ) - やだ魘夢可愛いすぎ (2021年1月10日 2時) (レス) id: 206c89cdd5 (このIDを非表示/違反報告)
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