第28話 会いたくない人 壱 ページ30
今日は、町で必要な物を買うため、出掛けている。迷惑をかけたくないから1人で行くと言ったけど、魘夢様が『特にする事もないから』と付いてきてくれたので日が暮れた町を2人で歩いていた。
「魘夢様、今日は一緒に買い物に来てくれてありがとうございました」
「いいとも、一人で買うとなると往復しなくちゃならないから手間でしょう?」
隣を歩く魘夢様を見上げると、微笑みと返事が帰ってくる。荷物を持ちながら、2人で歩いているとまるで本当の夫婦のようで、少し恥ずかしいような、でも幸せな気持ちが込み上げてくる。
勿論、私達は本当の夫婦ではないし、普通の人からしたら歪な関係ではあるのは承知しているけど、私はこの方が好き。だから、例えその関係が普通でなくても良いと思っている。
そんな事を考えながら、町を歩いているとある2人組が目に入った。自然と歩みが止まる。
「…………」
「……A。どうしたの?」
正面からこちらに向かって歩いてきた2人も私に気付き、立ち止まった。魘夢様が急に立ち止まった私を不思議そうに見てくる気配がするが私はその2人から視線を逸らせなかった。
「……Aちゃん」
「……えっと、久しぶりだね」
文ちゃん、と心の中で名前を呼ぶ。何故呼ばなかったかというと、何年もその名前を友達として呼んでいなかったからそのたった一言を発するのが難しかったから。
それに、彼女の名前を呼ぶ事で必然的に彼女の隣にいる友達───ひな子ちゃんの名前も呼ばなくてはいけなくなる。彼女の名前を呼ぶのは正直躊躇われた。
弱々しく笑う文ちゃんの隣に立つひな子ちゃんは、どこか意地悪げな笑顔を浮かべて私を見ていてあの頃と変わっていない。だんまりする私達に痺れを切らしたのか、彼女が口を開く。
「へぇ、何も噂を聞かないと思ってたけど、元気にしてたのね。隣の人は旦那さん?」
魘夢様を品定めするように、頭から下まで見るその姿に両親の姿が重なる。私自身この視線を向けられた事は幾度となくあったが、どうも好きになれない。
相手に失礼だと思うし、その対象が自分ではなく魘夢様に向けられている事がたまらなく嫌だ。だけど、言葉が漏れそうになったところで、魘夢様が一歩前に出て先に口を開いた。
「そうだよ、こんばんは。君達はAの友達かな?」
笑顔を作る魘夢様。周りから見れば愛想の良い綺麗な笑顔だが、数日間、一緒に過ごした私からはあれは作り笑いだとわかった。
「まあ、そんなもんね」
154人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「鬼滅の刃」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
包帯無駄遣い装置(プロフ) - ぶるうべりぃ♪さん» ですね! (2021年1月10日 21時) (レス) id: 206c89cdd5 (このIDを非表示/違反報告)
ぶるうべりぃ♪(プロフ) - 包帯無駄遣い装置さん» そうなんですよね!ムキムキ過ぎないところがまた素敵なんですよね!(続きはこみゅーの方にてお話しましょう!) (2021年1月10日 21時) (レス) id: 69ebf7d565 (このIDを非表示/違反報告)
包帯無駄遣い装置(プロフ) - ぶるうべりぃ♪さん» 特に映画の上半身裸になっているとこ((((悪夢見せてあげようか?by魘夢 (2021年1月10日 21時) (レス) id: 206c89cdd5 (このIDを非表示/違反報告)
ぶるうべりぃ♪(プロフ) - 包帯無駄遣い装置さん» そう仰っていただけて、嬉しいです!映画の魘夢様も、原作の魘夢様もすごく可愛いですよね!コメントありがとうございました! (2021年1月10日 12時) (レス) id: 69ebf7d565 (このIDを非表示/違反報告)
包帯無駄遣い装置(プロフ) - やだ魘夢可愛いすぎ (2021年1月10日 2時) (レス) id: 206c89cdd5 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ