第25話 私にとっての ページ27
「もうっ、それは家族の前でだけの話じゃないですかっ。あと、遠慮なくお風呂は借りさせていただきますっ」
彼の顔を見ているのも恥ずかしくなり、力一杯お辞儀をして家のお風呂へと向かう。
「怖くなったら呼んでね。怯えた顔を拝んであげるよ。Aが怖がるなら俺は脱がないから」
そんな声が追いかけてくる。というか、それはそれで問題ですから。そう思いはしたが、敢えて心の中の反発だけにしておいた。
魘夢様のお家に来て約1週間。そして今日は、久しぶりの仕事がお休みの日。たまっていたお洗濯物は朝に干して、まだ乾かしている途中なので他にやる事がない。今は部屋の中の日の当たるところで日向ぼっこしている。
「……暇なの?」
日の当たらない所に座っていた魘夢様が私に声をかけた。こちらを見る視線は、私達が朝目覚めた時のように少し眩しそうに歪められていて、思わず彼のいる日陰の方へと向かう。魘夢様の左隣に正座しながら、私は返事をかえした。
「……はい、少し。普通の子はお仕事がない日は友達と遊ぶんでしょうけど」
自傷気味に笑った私を、魘夢様は考え込むように見下ろす。日中だからかだろうか、いつもの生き生きとした感じはなく、少し落ち着いた雰囲気があり、儚げにも見える。しばらくの間の後、魘夢様は何か思いついたように『そうだ』と呟いた。
「良い事を思いついた。お昼寝したらどうかな? 俺が血鬼術でAに幸せな夢を見せてあげるよ」
言いながら魘夢様は私の頭に左手を乗せる。僅かに彼の重力が重なり、心地良い。
「幸せな夢……とは?」
普通の人は、家族や友達など大切な人と楽しく過ごす夢を『幸せな夢』と言うのだろう。だけど私は? 私にとって大切なのは……。
「……あの、魘夢様」
「なあに、A」
ぼそりと呟いた私に魘夢様は不思議そうに返す。
「私、夢を見る事も好きですよ……。1日の終わりが楽しみになる程に好きでした。だけど私今は……」
「うん」
こんな事を言ったら引かれてしまわないだろうか? 不安ばかり募り、もごもごと口が動く。
今まで同世代の子と話していて同じ状況になった時は『もう、いいよ』と話を切られてしまった。きっと思い通りに言葉にできない私に呆れてしまったのだろう。無理もない。
だけど、魘夢様は私の話を遮ったりせず、うじうじする私を気長に待ってくれている。だからこそ伝えたい……! そんな気持ちが強くなった。
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包帯無駄遣い装置(プロフ) - ぶるうべりぃ♪さん» ですね! (2021年1月10日 21時) (レス) id: 206c89cdd5 (このIDを非表示/違反報告)
ぶるうべりぃ♪(プロフ) - 包帯無駄遣い装置さん» そうなんですよね!ムキムキ過ぎないところがまた素敵なんですよね!(続きはこみゅーの方にてお話しましょう!) (2021年1月10日 21時) (レス) id: 69ebf7d565 (このIDを非表示/違反報告)
包帯無駄遣い装置(プロフ) - ぶるうべりぃ♪さん» 特に映画の上半身裸になっているとこ((((悪夢見せてあげようか?by魘夢 (2021年1月10日 21時) (レス) id: 206c89cdd5 (このIDを非表示/違反報告)
ぶるうべりぃ♪(プロフ) - 包帯無駄遣い装置さん» そう仰っていただけて、嬉しいです!映画の魘夢様も、原作の魘夢様もすごく可愛いですよね!コメントありがとうございました! (2021年1月10日 12時) (レス) id: 69ebf7d565 (このIDを非表示/違反報告)
包帯無駄遣い装置(プロフ) - やだ魘夢可愛いすぎ (2021年1月10日 2時) (レス) id: 206c89cdd5 (このIDを非表示/違反報告)
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